もやもやレビュー

連続殺人鬼によるマインドコントロール『死刑にいたる病』

死刑にいたる病
『死刑にいたる病』
白石和彌,高田亮,阿部サダヲ,水上恒司,岩田剛典,宮﨑優,鈴木卓爾,佐藤玲,赤ペン瀧川,大下ヒロト,吉澤健,音尾琢真,中山美穂
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 阿部サダヲが連続殺人鬼を演じた映画『死刑にいたる病』。櫛木理宇の同名小説が原作で、『凶悪』などの白石和彌監督がメガホンを取りました。そんな本作、連続殺人鬼によるマインドコントロールがどのように始まり、どのように人を狂わせていくのかをじっくり時間をかけ、じんわりと表現している恐ろしい一本でした。

 高校生ばかりを狙い、世間を震撼させた連続殺人鬼の榛村大和。彼から大学生の雅也の元に1通の手紙が届きます。雅也は中学生の頃、榛村が営むベーカリーの常連でした。拘置所の面会に訪れた雅也は、榛村から「最後の一件は冤罪だ」と聞かされ、真犯人を突き止めてほしいと依頼されます。最後の一件だけ、被害者は高校生ではなく、26歳のOL。さっそく事件を調査し始める雅也は、多くの驚くべき真実を突き止めていきます。

 雅也と話す時の榛村は、「すごいね」などの褒め言葉を巧みに使います。三流の大学に通っていることが後ろめたい雅也。彼にとってこの事件の調査は没頭できるものでもあり、どんどん榛村との面会を増やしていきます。榛村によるマインドコントロールが詰め込まれた本作、OLを殺害したのは誰なのか本当に最後の最後までわからないのも惹きつけられた理由の一つでした。本作は目を背けたくなるような拷問シーンも含まれているので、見終わった後はどっと疲れを感じたものの、この作品の衝撃が当分忘れられませんでした。ちなみに原作で重要な部分が映画ではあまり描かれなかったとのネットの声もあったので、本作をより深掘りしたい方は、ぜひ原作も一読してみてください。

(文/トキエス)

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