もやもやレビュー

「卵を分けてくれませんか」から始まる惨劇『ファニーゲーム』

ファニーゲーム [Blu-ray]
『ファニーゲーム [Blu-ray]』
スザンヌ・ロタール、ウルリッヒ・ミューエ,ミヒャエル・ハネケ
キングレコード
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 1997年のオーストリア映画『ファニーゲーム』。救いようのない内容と衝撃的な描写が話題となり、長いあいだ語り継がれている作品です。公開時、カンヌ映画祭では離席する人が続出&ビデオの発売禁止を訴える運動まで起こったそう。

 仲のいい夫婦、アンナとゲオルクは一人息子を連れて休暇のために別荘へと向かいます。一家が到着してまもなく、若い男ペーターが訪れます。彼は「隣人から頼まれて来ました。卵が足りないので、分けてくれませんか?」と話し、アンナは快く承諾します。しかし、ペーターは玄関で卵を割ってしまい、もう一度分けてほしいと頼みます。アンナは新聞紙で包んであげようと支度していたところ、なんとペーターが電話を水没させてしまうのです。さらにペーターの友人であるパウルが玄関に現れ、不穏な空気に。そこへゲオルクと息子が帰宅。違和感に気づいたゲオルクは、2人に帰って欲しいと頼みます。しかし、パウルと口論になり、ピーターはゴルフクラブでパウルに襲撃され足に酷い怪我を負ってしまうのです。

「ゲームをしよう」......そう家族に声をかけるパウルとペーター。彼らの動機は全くもって不明で、冷静なのに凶変する2人に圧倒されてしまいます。ちなみに2人は白い服に白い手袋をしており、第一印象は「礼儀正しい」。そんな2人が繰り広げる残酷劇は、第一印象からはかけ離れたもので、そのギャップにショックを受けてしまいます。突然言動がエスカレートしたり、突然笑顔になったり、そんな2人に心が振り回されっぱなしの一本でした。胸糞映画の中のトップ作品と言っても過言ではない作品なので、気分が落ちている時に見るのはお勧めできない作品です。

ちなみに本作で、アンナとゲオルクを演じたスザンヌ・ロタールとウルリッヒ・ミューエは実際に夫婦でした。悲しいことに2人とも50代で亡くなっているとのこと。

(文/トキエス)

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