もやもやレビュー

ケレン味で作品の粗をすべてかき消す『ヴァンプス/VAMPS』

ヴァンプス/VAMPS(字幕版)
『ヴァンプス/VAMPS(字幕版)』
ミカエル・ポレチェンコフ,コンスタンチン・クリウコフ,アグラヤ・シロフスカヤ,ミカエル・ジガロフ,セルゲイ・ギンズバーグ,アレクセイ・チム,ティホン・コルネブ
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吸血鬼モノの見どころは何といっても理屈や設定を押しのけるケレン味にあると思っている。本作を真面目に視聴したらエンディングで「何だこのクソ映画!」と腹を立ててスマホやタブレットを投げ捨てたくなるが、妙に美麗な映像と雰囲気で「まぁ、いいか」となる不思議。

18世紀のロシアにある辺境の村を舞台に美女を生贄として儀式を行おうとする吸血鬼と神父らの戦いを描く、という内容。嘘は書いていないはずなのに視聴した感想とはかけ離れているため色々と補足したいと思う。

神父は吸血鬼の手下であるグールを倒すために大量の火薬で爆死、ラスボスである吸血鬼は噛みつこうとしたところに口へニンニクを放り込まれて太陽に焼かれ死亡。半吸血鬼である美女も美女で理性を失い暴れているところを主人公の血を見て我に返る。美麗な映像から雑な演出の落差に「これはコメディ映画なのか?」と思ってしまうが作中では皆さん大真面目。個々のシーンを切り抜くと酷い映画のように感じてしまうが通しで視聴するとケレン味が際立つ結果になっているので計算された演出なのかも知れない。他に何か上手い方法はなかったのかと思うけども。小道具や衣装は金がかかっていそうだったし、よくある低予算B級映画とは異なっている。

ちなみに本作の原作はロシアが誇る文豪トルストイの親類であるアレクセイ・トルストイによるもの。トルストイの身内がニンニクを放り込まれたり火薬で爆死したりという描写をしているのだろうかと大変気になるところ。

(文/畑中雄也)

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