スカッとジャパンな不穏ホラー『ザ・ウーマン 飼育された女』
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酷い映画に当たった際の唯一の利点は「あの映画を視聴したんだけど何から何まで酷くてさぁ」と友人知人に対する話のネタにできることくらいなのに、本作に関してはそれもできない。試しに何人かの友人感想を送ったところ「観なくても分かりそうなものをわざわざ観たらそうだろうな」とつれない返事ばかり。会話のラリーすら成立させてくれない仕様になっている。
本作は10年ほど前、米国の映画サイトで「一度見たら二度と見る気になれない不穏なホラー映画」に選ばれた作品であり、それを好んで視聴したのだから自業自得でしかない。
あらすじは、弁護士のクリスが妻のベラ、長女のペギー、長男ブライアン、次女のダーリンと暮らしているところから始まる。クリスが趣味のハンティングのため森に出かけると野人の女を見つけ捕獲。女は食人族の最後の生き残りで、クリスは女の手足を縛り家畜として飼育すると宣言、倉庫で世話をする中で家族内の問題が露呈していくという内容。
このクリス、妻へはDV、長女には性的暴行をして妊娠させるなど、弁解の余地がないほどロクでもない。長男も子どもだが、こいつもこいつで食人族の女の乳首をペンチでいたぶり楽しむヤバい奴。そんな奴らが前半さんざん暴れまわり最後は食人族の女に惨殺されるので怖いというよりすっきりした爽快感が先に立つ。
常時胸糞の悪さとグロさで終始圧倒してくるので諸々の疑問を吹っ飛ばしてしまうが、視聴を終え、振り返るとそもそも森に食人族がいる環境って何だよと。細かいことを言わずグロさを楽しむのであれば些末なことなのかもしれないが、特にグロを求めて視聴した訳でないため気にし始めると魚の小骨のように引っかかる。
あと、哀れな被害者は食い殺すのにクリスの家族である妻や長女らは襲わず黙って森に帰る不思議。
作中に理由を匂わせてくれたら「あ、そういうことなのか」と勝手に納得できるのだけど作中でその辺りを理解することはできなかった。
そんな感想を視聴したことのある友人に話したら「超絶過激なスカッとジャパンみたいなもんだと思って、酒でも飲みながら楽しめよ。考えるな」という返事。
とは言え血しぶきや悲鳴を肴に酒は飲みたくないかなぁ。
(文/畑中雄也)