もやもやレビュー

狙われる要素過積載の主人公を襲う漆黒のキャデラック『ブラック・キャデラック』

ピンク・キャデラック(字幕版)
『ピンク・キャデラック(字幕版)』
クリント・イーストウッド,バーナデット・ピータース,マイケル・デ・バレス,ジェフリー・ルイス,ティモシー・カーハート,ジム・キャリー,バディ・バン・ホーン,デビッド・バルデス,ジョン・エスカウ
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 映画の説明文に「黒塗りのキャデラックの謎と恐怖を描いたアクション・スリラー」という文言があったので「『激突』みたいな作品かぁ」と思い視聴したところ、車で追い回されるという部分のところ以外、まるで見るべき点がなかった。終盤にキャデラックが若者を追い回した理由がバカすぎて困惑以外の感想が出てこない。

 主人公と思しき3人の高校生が車で飲み屋に繰り出し、大騒ぎしたり人妻に手を出したりと傍若無人に振る舞った挙げ句、喧嘩騒ぎを起こして酒を飲みながら逃げ出していく。そんな3人を漆黒のキャデラックが執拗に追い回していく、というあらすじ。
 この手の話は理不尽に主人公が追い詰められるから恐怖を感じるのであって、鼻持ちならない連中が酷い目に遭おうと怖いとは思うまい。

 この後、3人はパトカーがエンストした警察官を乗せ何度もキャデラックに追いかけられるのだが、この警官というのが先に触れた人妻の夫。終盤で人妻が警官に殴られる度、飲み屋で男と浮気を繰り返し、その都度警官がキャデラックで浮気相手を殺害していたというオチだった。登場人物、全員ロクでもない。バカな若者、メンヘラな人妻、イカれた警察官と正気の人間が出てこない。作中に感情移入するべき対象が皆無だとここまで没入できないものなのかと妙な気づきを得てしまった。トラブル起こしすぎて誰が狙っているか分からない主人公、呼吸するように不倫する人妻、そんな妻と別れず相手の男を漏れなく仕留める警察官......視聴した感想は「全員爆発したらいいんじゃないか?」しか出てこない。

 3人は追い詰められピンチに陥るのだが、なぜか人妻が暴走するキャデラックの前に飛び出し、ハンドルを切った警官がキャデラックと一緒に崖へ転落して終わるという、酷いエンディング。

 B級映画の楽しみ方の一つに「ツッコミを入れながら視聴する」という部分があると思うのだが、上記の通り誰にも感情移入できないため誰視点で突っ込むべきなのかというところから考えないといけない。そしてそんな時間は無駄なのでさっさと別の作品を見た方が色々有意義だ。

(文/畑中雄也)

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