ファストフードを通して描く社会の"闇"『ファーストフード・ネイション』
- 『ファーストフード・ネイション デラックス版 [DVD]』
- グレッグ・キニア,イーサン・ホーク,アヴリル・ラヴィーン,パトリシア・アークエット,ポール・ダノ,カタリーナ・サンディノ・モレノ,リチャード・リンクレイター
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『ビフォア・サンセット』などで知られるリチャード・リンクレイター監督がメガホンをとった2007年製作の映画『ファーストフード・ネイション』。イーサン・ホークやポール・ダノ、ブルース・ウィリス、アヴリル・ラヴィーンなど豪華俳優陣が集結した本作は、大手ハンバーガーチェーンを通して社会の"闇"を描いています。原作は、ジャーナリストのエリック・シュローサーの「ファストフードが世界を食いつくす」。
大手ハンバーガーチェーン「ミッキーズバーガー」。ビッグワンという商品が人気で、本社では、バーベキュー・ビッグワンなど新製品の香りを「本物」に近づける研究や、新商品名に関する会議が行われていました。そんな中、マーケティング部長のドンは、社長から「パテの調査で糞便性大腸菌が検出された」と聞かされます。要するに、ビッグワンに使われているパテに牛の糞が混入しているとのこと(考えただけでもゾッとします)。混入の経緯を調査するため、ドンは精肉工場を訪れることに。訪れた工場では最新の機器が使われており、清潔感もあってなんの問題もないように見えますが、その一方で工場に関する悪い噂を耳にするようになり......。
物語は、ドンの調査の旅と、メキシコ人が国境を越え、精肉工場で働くまでの旅が描かれています。夢を見て国境を渡ってきた不法移民が働く場所は、劣悪な環境。工場長は若い女性に目をつけて、体の関係を持つ。男性は異臭を放つ場所を掃除、他にも危険な作業が待っているのです。大金を払ってまで国境を渡ってきた人たちが目の当たりする環境は「幸せ」とは真逆のもの。また、「手軽で格安」なファストフード店で低賃金で働く学生バイトにも焦点が当てられ、ファストフードというビジネスが生み出した悪いところをとことんリアルに描き出しているのが本作。ちなみに本作の後編では牛が殺されて精肉処理されるシーンが生々しく映し出されているので、鑑賞には注意が必要かも。ファストフードもお肉も当分食べたくなくなる重い一本でした。映画ファンとしては『リトル・ミス・サンシャイン』のポール・ダノとグレッグ・ギニアの共演が見れたのがなんとも嬉しいポイントでした。
(文/トキエス)