もやもやレビュー

『コーダ あいのうた』

コーダ あいのうた(字幕版)
『コーダ あいのうた(字幕版)』
エミリア・ジョーンズ,フェルディア・ウォルシュ=ピーロ,マーリー・マトリン,シアン・ヘダー,ステファン・セリエ
商品を購入する
>> Amazon.co.jp

 "耳が聞こえない親のもとで育った子ども"を意味する「Children of Deaf Adults(CODA)」。これがそのままタイトルになった映画『コーダ あいのうた』は、フランスの大ヒット映画『エール!』のリメイク版。本作には、実際に聴覚に障がいを持つ俳優が出演しており、主人公の父親役を演じたトロイ・コッツァーは、アカデミー賞で助演男優賞を受賞したことでも大きな話題となりました。

 舞台はマサチューセッツ州グロスター。そこに住む内気な17歳のルビー・ロッシは、ろう家族の中で唯一耳が聞こえる存在。毎朝学校に行く前に父と兄の漁業を手伝い、同業者に通訳をして懸命に働いています。ルビーは家族にとって、世界とつながるための「架け橋」的な存在。そんな彼女は、学校でコーラス部に入り、歌の才能を先生から見出されます。しかし、歌の良さは家族には伝わらず、自分の夢を追いかけ音楽学校に進学するか、家族の支えとなって生きるかという選択で頭を悩ませます。

 本作でとても印象的だったのは、家族がルビーの初のコンサートに足を運ぶシーン。周りが歌に感動したり笑顔になったりするのに、ルビーの家族たちは何が起こっているのか理解できません。そして突如静かになり、ルビーの家族の立場となってコンサートを体感するシーンがあります。彼らの立場を理解できるシーンがあるからこそ、映画の世界にどっぷり浸かることができました。

「CODA」は前述した「Children of Deaf Adults」のほかにも、作曲における音楽の終結部を意味しています。映画の終盤では、涙が溢れ出てしまうほど美しい物語に仕上がっている本作。ぜひハンカチを持って鑑賞してみてください。

(文/トキエス)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム