もやもやレビュー

好きなことを諦めない『ブリグズビー・ベア』

ブリグズビー・ベア (字幕版)
『ブリグズビー・ベア (字幕版)』
カイル・ムーニー,クレア・デインズ,マーク・ハミル,グレッグ・キニア,マット・ウォルシュ,ミカエラ・ワトキンス,デイヴ・マッカリー,フィル・ロード,クリストファー・ミラー,ウィル・アレグラ,アンディ・サムバーグ
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 米人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」のチームが集結した映画『ブリグズビー・ベア』。笑えるシーンが多く、「日常で忘れがちな大切なこと」も思い出させてくれたほっこり作品でした。

 25歳の青年ジェームズは、父テッドと母エイプリルと一緒にシェルターのような場所で暮らしていました。そんな彼は、小さな時から教育ビデオの「ブリグズビー・ベア」を見て育ち、その世界に没頭。しかしある日、シェルターに警察が押し寄せ、テッドとエイプリルが逮捕されます。そこでテッドとエイプリルが誘拐犯だということが判明。ジェームズは、本当の家族のもとへと帰り、初めて外の世界に触れます。そんな彼は妹の同級生と仲良くなり、一緒に映画作りを始めることに。

 現実世界に適応することに苦労し、さらに「ブリグズビー・ベア」の世界から離れることができないジェームズ。本当の親からしたら、「ブリグズビー・ベア」は誘拐犯を思い出させる複雑なもの。しかしジェームズにとっては、かけがえのないものなのです。親の複雑な心境をよそに「ブリグズビー・ベア」の続編を作り始めたジェームズは、担当刑事が昔、演技をかじっていたことを知ります。そんな彼に「なぜ好きなことを諦めるの?」と純粋な眼差しで聞くジェームズ。25年ものあいだ外の世界と遮断されていたジェームズが何気なく持つ疑問は、現代を生きる私たちの心にぐさっと刺さるものばかりでした。またジェームズが映画作りに捧げる情熱に胸打たれます。自分が昔没頭していたもので、もう手をつけていないものや、途中で諦めてしまったものに再度挑戦したくなる、そんな作品でした。

(文/トキエス)

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