もやもやレビュー

焦りがちな人間は『グロリア』にならえ!

グロリア (字幕版)
『グロリア (字幕版)』
ジーナ・ローランズ,バック・ヘンリー,ジュリー・カーメン,ジョン・アダムズ,ジョン・カサヴェテス,Sam Shaw
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想定外のことが起きると、静かに、あるいはときに大げさにパニック状態に陥るのはおそらく私だけではないだろう。でもその様子はどうも滑稽である。冷静沈着、「受けて立とうじゃない」という姿勢のほうが、100倍清々しい。『グロリア』(1980)を観ると、そう確信する。

本作の主人公、グロリア(ジーナ・ローランズ)は、ニューヨークで独り身の人生を送る元情婦。コーヒーを切らし、同じビルに住む友人の部屋を訪れると、まあ大変。ギャング組織の会計士である友人の旦那が、FBIなどに会計情報を漏らしてしまい、ギャングはすぐそこ、友人一家は殺される寸前。「息子の命だけは......!」と6歳のフィルをグロリアがかくまうことになる。グロリアがフィルを自宅に連れてきた直後に友人一家は射殺されてしまうわけだが、全員殺さないとことが済んだことにならない。となれば、次なるターゲットはフィルだ。

フィルを預かったグロリアは一見、とんでもなく面倒くさそうな顔をしている。ところがいざ彼を守ると決めると、全力でそれを貫き通す。「まあ、しゃあない」とでもいうようにバッグにごそごそ銃をしまい、フィルを危険にさらす人物が出現すると素早く銃を取り出し、「できることならかかってきてみなさいよ」と強気に脅す。腹をくくるとはこういうことだと体を張って教えてくれるグロリアが最高にかっこいい。

ちなみに明日殺されてもおかしくないグロリアは、1日の終わりにちゃんと湯船に浸かる。身だしなみだって、絶対に手を抜かない。究極のタスクを託されると、むしろこれくらいの余裕が持てなければやり抜けないのかもしれない。こんなところも学びたいところである。

(文/鈴木未来)

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