もやもやレビュー

「熱狂的ファン」と「ストーカー」の境界線とは......『ザ・ファン』

ザ・ファン
『ザ・ファン』
Denise Blasor,ロバート・デ・ニーロ,ウェズリー・スナイプス,エレン・バーキン,ジョン・レグイザモ,ベニチオ・デル・トロ,トニー・スコット,Wendy Finerman
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 あなたには「推し」がいますか? 有名人や配信者を好きになったことはありますか? そして普段の生活を忘れてしまうほどその人に熱中したことはありますか? ファンの心理が行き過ぎると「ストーカー」になる、そんな誰でも陥りそうな恐怖を描いた作品『ザ・ファン』を今回はご紹介。ロバート・デ・ニーロ主演、ベニチオ・デル・トロやジョン・レグイザモなどが出演するトニー・スコット監督作品の本作は、仕事や家庭の歯車が狂った中年男性が徐々にメジャーリーガーに執着し、ストーカー犯罪に手を染める物語。

 サンフランシスコ・ジャイアンツの熱狂的ファンであるギル(ロバート・デ・ニーロ)。彼が、地元ラジオの企画で球団に所属する人気選手ボビーと電話で話すという、野球ファンなら誰もが憧れるチャンスをゲットしたシーンから本作はスタート。彼はボビーを応援するために、息子を連れて開幕戦へと足を運ぶのですが、野球観戦の時間と、仕事の商談のアポが被ってしまったことから、彼は息子を置き去りにして仕事場へと足を運びます。しかし商談はうまくいかず。さらには息子を置き去りにしたことで、別れた妻から接近禁止命令を突きつけられてしまいます。そして会社もクビになってしまったギル。彼は「野球」という熱中しているものにすがるようになり、さらにはスランプに陥ったボビーのために、ライバル選手を殺害してしまいます。

「すべてはボビーのために」という精神でどんどん狂った行動をしでかすギル。商談のシーンなどでも、咄嗟にキレてしまう性格が垣間見えるこのキャラクターを、ロバート・デ・ニーロが力演。ロバートといえば、『タクシードライバー』や『ケープ・フィアー』など、これまで狂気のキャラクターを演じてきました。本作でも、ファンの期待を裏切らずに、しっかりと恐ろしい男を演じています。
 日本でも最近では、配信者を好きになった女性が勝手に婚姻届を提出したなんてニュースもありましたが、ファンの心理がどこでどのように凶変していくのかを強烈に描き出しているこの作品は、ぜひお勧めしたいです。

(文/トキエス)

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