『月刊予告編妄想かわら版』2024年1月号
映画『哀れなるものたち』(1月26日公開)より
毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』二十九回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
1月公開の映画からは、この四作品を選びました。
*
『笑いのカイブツ』(1月5日公開)
公式サイト:https://sundae-films.com/warai-kaibutsu/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=VTY6IW6TCdQ
Web連載で支持され書籍化された"伝説のハガキ職人"ツチヤタカユキの私小説を映画化した『笑いのカイブツ』。
「大喜利5年、ハガキ(職人)3年、構成作家1年」という笑いに取り憑かれた男・ツチヤ(岡山天音)に「そうとうお笑い野郎だな」というお笑い芸人・西寺(仲野太賀)。ツチヤは大喜利番組にネタを投稿し続け、「レジェンド」の位まで行き着く。やがて憧れの構成作家の見習いになるものの、先輩の構成作家たちのお笑いに対しての態度に不満を持ったことが発端で彼らから嫌われていってしまう。
「お前ここじゃなきゃ、生けていけねえぞ」と言う西寺、「地獄やのお、この地獄で生きろや」と言うピンク(菅田将暉)の姿も予告編で見ることができます。
ここからは妄想です。いや、希望です。「やるだけやって燃え尽きたらそれまでじゃ。その先に何があんねん。誰かが作った常識になんで潰されなあかんねん!」というツチヤの魂の叫びも予告から聞こえてきます。
笑いに取り憑かれて、いや真摯に向き合うことで周りの人たちに理解されなかった「人間関係不得意」なツチヤ、彼のどん底に落ちても這い上がっていく姿は、なにかになろうとしている、なにかになれなかった人の心を鼓舞させるに違いありません。新年一発目には最高な作品ではないでしょうか?
『笑いのカイブツ』
2024年1月5日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー
配給:ショウゲート、アニモプロデュース
©︎2023「笑いのカイブツ」製作委員会
*
『カラオケ行こ!』(1月12日公開)
公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/karaokeiko/
予告編:https://youtu.be/TfPKOSpura0?si=Z5UxBUGlMqN_ye2Q
和山やま原作×山下敦弘監督×野木亜紀子脚本『カラオケ行こ!』。恐怖のカラオケ大会で罰ゲームとして、変な刺青を入れさせられてしまうことに悩むヤクザの成田狂児(綾野剛)。狂児が合唱部に入っている中学生の岡聡実(齋藤潤)と出会う。どうしても罰ゲームが嫌な狂児は聡実をカラオケに連れていき、「歌教えてくれへん?」と頼み込みます。そして、勝負曲であるX JAPAN『紅』を歌って聡実に聞かせるものの、「終始裏声が気持ち悪い」とまったく忖度しない意見を言われてしまう。
狂児と聡実が歌とカラオケでのレッスンを通じて年齢の離れた友達になっていく物語のようです。聡実自身は声変わりを迎え、綺麗なソプラノが出ないことを悩んでいる姿も予告編で見ることができます。
ここからは妄想です。車で事故に遭ってしまう狂児の姿と親分に歌えとマイクを渡されている聡実の姿も予告編にあります。おそらく事故に遭った狂児の代わりに聡実が『紅』を熱唱するはずです。ソプラノの綺麗な声ではない、新しい聡実の大人に近づいた歌声で親分らヤクザをたちを魅了します そして、そのことによって罰ゲームから逃れた狂児は足も洗うことができてカラオケ店で働き始めます。仕事が暇な時はサボって二人でカラオケ三昧をするという次なる青春を謳歌するラストはどうでしょうか?
『カラオケ行こ!』
1月12日(金)公開
製作・配給:KADOKAWA
©2024『カラオケ行こ!』製作委員会
*
『僕らの世界が交わるまで』(1月19日公開)
公式サイト:https://www.culture-pub.jp/bokuranosekai/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=3329TyTF12k
『ソーシャル・ネットワーク』で主演を務めたジェシー・アイゼンバーグ初監督作品『僕らの世界が交わるまで』。社会奉仕に身を捧げるママ(ジュリアン・ムーア)とネットのライブ配信で二万人のフォロワーがいる高校生の息子・ジギー。
思春期を迎えた息子が何を考えているのかわからなくなってしまったママ。夫でありパパからすれば、二人は自己愛が強くて似た者同士だと言っています。そんなそっくりな母と息子は果たしてわかりあえるのかという、誰にとっても身近なテーマを描いた作品になっているようです。
ここからは妄想です。ジギーは気になっている女の子に「ガキね」と言われ、母には人生において「近道はないのよ」と言われている姿も見ることができます。やはり似た者同士の二人がいかに相手のことを理解しようとして、距離を縮められるかという展開になるはずです。
ジギーが配信で歌っているのを見るママの姿も予告編にあります。彼は彼女に届くような歌詞を必死で考える中で、ママとの思い出を振り返り、その愛情に改めて気づくのではないでしょうか? 息子の歌を聴いたママは彼のやりたいことを理解して応援するようになる。だが、今度は自分も社会奉仕について配信を始めたいというママにジギーが悩まされるというラストかもしれません。
『僕らの世界が交わるまで』
1月19日(金)公開
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
© 2022 SAVING THE WORLD LLC. All Rights Reserved.
*
『哀れなるものたち』(1月26日公開)
公式サイト:https://www.searchlightpictures.jp/movies/poorthings
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=HLHUXpx05uE
第80回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したヨルゴス・ランティモス監督作『哀れなるものたち』。「彼女は実験中だ。脳と身体はまだちゃんとつながってない。だが急速に成長している」とフランケンシュタインかのような風貌の天才外科医ゴドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)に言われている見た目は大人の女性ベラ(エマ・ストーン)。どうやら彼女は一度死んだものの、ゴドウィンによって甦らされた存在のようです。
「わたしはベラ・バクスター。世界を周って楽しむの。目的は成長。大人になるの」と語る彼女は各地へ旅をして、セックスやダンスを覚え、どんどん子供の状態から大人になっていく姿が予告編で見ることができます。
ここからは妄想です。と言いたいところですが、「東京国際映画祭」と試写で私はすでに二回観ています。その上で言いたいのはこの予告編以外はもう情報入れないで、まず劇場に足を運んでください。そして観てください! すごい作品です。
成長していくベラは何も知らなかったからこそ、世界を旅することで社会における様々な矛盾や自由を縛るものを知っていきます。なによりも男性優位社会への強烈なアイロニーも炸裂していて、男性としては身につまされる所もありますが、ベラの自由を勝ち取ろうとする意志にどんどん惹かれていきます。2024年のマストな一作です。
『哀れなるものたち』
1月26日(金)公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
*
文/碇本学
1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。