期待を裏切る演出満載！ 『SMILE スマイル』

　笑顔ってさまざまな意味を持つと思います。心から面白いと思ったとき、ハッピーなとき、悲しみを押し殺そうとするとき、精神崩壊したとき......人の心理が分かりづらい「笑顔」はまさに恐怖を感じさせるものでもあります。そんな「笑顔」を題材にした映画『SMILE スマイル』を今回はご紹介。本作は、パーカー・フィンが監督と脚本を務め、彼の2020年の短編「Laura Hasn't Slept（原題）」を基にしたものです。

　主人公のローズはセラピストで、幻覚に苦しむ患者の1人が自殺するのを目撃してしまいます。この患者はその4日前、自分の教授が自殺するのを目撃していました。この事件の後、ローズもまた幻影を見るように......。あるときは知り合いの姿、あるときは全く知らない人の姿で彼女を襲う謎の存在。ローズの精神状態は悪化し、彼女はやがて自分が呪われていると思い始めます。

　本作は、お化け屋敷のような、急に驚かせてくるシーンがたくさん。見事な演出が施されており「安心しきっていた......！」というときに思わず絶叫してしまうシーンもありました。でも、フィン監督のすごい演出はそれだけではなく、観客の期待をいい意味で裏切ってくるところにあると思います。「思っていた通りになるわけないだろう...」というシーンがその通りになる。そんな意外性もあって、観客たちにホラー映画には欠かせない「不安」を抱かせてくれるのだと思います。また、広大な風景に焦点を合わせ、カメラが完全に逆さまになるショットが何度も登場するのも本作のポイント。ストレスの溜まる瞬間も意図的に増やしている。これも、フィン監督が意図的に仕向けた演出なのかも。

（文／トキエス）