もやもやレビュー

奴隷制度の恐怖に立ち向かう『アンテベラム』

アンテベラム(字幕版)
『アンテベラム(字幕版)』
ジャネール・モネイ,エリック・ラング,ジェナ・マローン,ジャック・ヒューストン,カーシー・クレモンズ,ガボレイ・シディベ,ジェラルド・ブッシュ,クリストファー・レンツ,ジェラルド・ブッシュ,クリストファー・レンツ
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 ジャネール・モネイが2人の異なる境遇の女性を演じた社会派スリラー『アンテベラム』。タイトルは「南北戦争前」を意味していて、本作では現代と南北戦争前の2つの時代で女性が奴隷制度に立ち向かう姿を描いていますが、物語はとんでもない方向へと向かっていきます。

 ある南部の農園では、黒人たちが過酷な労働を強いられており、エデン(ジャネール・モネイ)が、仲間と一緒に脱走計画を実行。しかし、失敗に終わったことで拷問されてしまい、脱走を試みた仲間の女性は殺されてしまいます。その一方で時代は変わり、人気作家であるヴェロニカ(ジャネール・モネイ)は、成功者で夫と幼い娘と幸せに暮らしていました。そんな彼女は黒人女性の権利について訴えかける講演会を成功させ、友人たちとディナーを楽しみますが、何者かに誘拐されてしまい......。

 エデンとヴェロニカ、2人の境遇が違う女性の物語が、交互に描かれている本作。そこに共通するのは、「奴隷制度に立ち向かう女性の姿」です。2020年代に奴隷制度があるわけではありませんが、白人至上主義の考え方は今もあると言えるでしょう。そんな二つのシチュエーションの中、秘密が明らかになるにつれ、サスペンス要素がぐっと濃くなっていく。スリラーというジャンルの力を使って、アメリカの集団心理を奥深くまで描いている一本だなと思いました。

(文/トキエス)

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