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宮沢賢治、没後90年『銀河鉄道の父』

『銀河鉄道の父』 5月5日(金・祝)より全国公開

原作は、門井慶喜が大量の宮沢賢治資料の中から父・政次郎について書かれた資料をかき集め、究極の家族愛を描いた第158回直木賞受賞の傑作小説。『ソロモンの偽証』『いのちの停車場』の成島出監督がメガホンを取り映画化されることとなった。
明治から昭和まで、賢治が生きた時代のリサーチを重ね、さらに「春と修羅」「注文の多い料理店」の初版本なども忠実に再現している。

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裕福な質屋の長男で跡取りとして産まれた宮沢賢治(菅田将暉)。賢治の自由奔放さに厳格にあろうとするも父、政次郎(役所広司)はどうにも息子に甘い。妹トシ(森七菜)の病気を機に賢治は筆をとりはじめるも中々世の中に認められることはなかった。

宮沢賢治の作品は小学生の頃に何度も読んでいた。課題図書だったり、教科書にも掲載されていたり目にする機会は多かったように思う。それもあって、あまりにも自分の中で有名で偉大な人物の1人が享年37歳という若さで亡くなっていたことを本作を観るまでは知らなかった。さらに、宮沢賢治はペンネームではなく本名だったのかとか様々な発見があり、あの風の又三郎など面白い作品が病気の妹を楽しませるために書かれていたというエピソードはなんだか切なかった。

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『銀河鉄道の夜』は大好きで何度も何度も読んでいた。そんな賢治の作品を思わせるシーンが登場することがとても印象的だった。
たとえ亡くなってもその人が残した物語や詩などの作品は後世に語り継がれる。文章に魂を宿して生きることが出来ることを確信させる力強いメッセージが詰まった作品だった。宮沢賢治、没後90年にぜひおすすめしたい一作だ。

(文/杉本結)

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『銀河鉄道の父』
5月5日(金・祝)より全国公開

監督:成島出
原作:門井慶喜「銀河鉄道の父」(講談社文庫)
出演:役所広司、菅田将暉、森七菜、豊田裕大、坂井真紀、田中泯
配給:キノフィルムズ

2023/日本映画/128分
公式サイト:http://ginga-movie.com
予告編:https://youtu.be/WHSe3EvTIJk
©2022「銀河鉄道の父」製作委員会

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