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【無観客! 誰も観ない映画祭】第20回『ロボ道士 エルム街のキョンシー』

『ロボ道士 エルム街のキョンシー』VHS廃盤(筆者私物)

『ロボ道士 エルム街のキョンシー』
1988年・香港・90分
監督/エドガー・ジェール
脚本/ロジャー・マークハム
出演/シンシア・ローズ、トニー・ジョブ、ハリエット・ブラウン、ボブ・ポーほか
原題『THE VAMPIRE IS ALIVE』

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 前回の『ロボハンター』はいかがでした? くだらない映画でしたね(笑)。今回の作品、ビデオジャケットを見ていただければお分かりのように、輪をかけてくだらなくなります。「ロボハンターと同じじゃねえか!」って? トーマス・タン社長率いるフィルマーク社(詳細は前回コラム参照)は、ロボハンターのスーツをここで捨てるのはもったいないと、ちょこっと手を加えて使い回しをしたのです。

 ビデオジャケットの裏には、『ラストエンペラー』(87年)の溥儀(ふぎ)が実名で、ほか「腐霊泥」「囚悪杖願ー」が登場すると書いてあります。「腐霊泥」は『エルム街の悪夢』(84年)のフレディですが、さて「囚悪杖願ー」は何て読むのでしょうか。......シュワルツェネッガーでした! 「願ー」が苦しいですね。さてストーリーを紹介しますが、深く考えないでいきましょう。


 アメリカ人の女性脚本家ジョイスは大作『中国最後の皇帝』を執筆するため、マネージャーのシンディと香港郊外の別荘に籠もります。2人と運転手は、別荘へ行く途中の山腹で儀式中の道士に遭遇します。道士は運転手に「死相が出ている」、2人の女性には「不吉な事が起こる」と予言します。さっそく運転手は帰りの車中で電話器のコードが首に巻き付き変死、女性らにも指が刃になった腐霊泥キョンシーの魔の手が迫ります。

 その頃、町では『中国最後の皇帝』を製作するローレンス社長が、女性探偵ジャッキーに運転手変死事件の調査を依頼します。殺しはライバル会社(実体は犯罪組織)による妨害でした。ここでジャッキーは我々の想像を遥かに超える行動に出ます。目を付けた会社に内偵させた助手ファニーが拳銃を持った男に追い掛けられてくると、その男を容赦なく射殺。そこのボスが飲食店に現れると、トイレで待ち伏せ携帯ボーガンを額に撃ち込んで暗殺。その報復にファニーを誘拐した幹部には、単身でアジトに乗り込み毒入りリップを塗り込んで毒殺します。えーと、ジャッキーは殺し屋じゃなくて探偵ですよね? 相変わらずフィルマーク作品は疑問だらけです。

 暗黒街のライバル組織が潰滅して喜んだのはもう一社、ラストエンペラーを題材にした映画製作を目論んでいたジャクソン社長でした。さっそくジャクソンは、ナイトクラブで歌っている美少女ファニーを王妃役にスカウトします(枕営業込み)。実はこれ、ジャッキーがファニーをスパイとして接近させていたのです。

 さて、ローレンス社長とその片腕ディクソンは、路上の占い師に映画の成功を占ってもらいます。すると映画はヒットするがジョイス達がピンチに陥っていると出ます。心配になったディクソンは別荘に様子を見に行きますが、2体の雑魚キョンシーに襲われます。ディクソンはカンフーで対抗しますが、さらにマッチョなターミネーター風キョンシーが登場! これが「囚悪杖願ー」でしょうが、シュワちゃんに全く似てません。ディクソンは3対1という不利な状況に、パッと白装束のニンジャに変身! もちろん日本の忍者とは似て非なるアメリカ人が勝手に考えた「ニンジャ」です。流血しながらも何とか3体を倒したディクソンが本社に戻ると、ローレンス社長は「脚本はできたか?」。これにディクソンは「様子を見てきます」。え......さっき別荘に行ったよね? キョンシーと戦った報告もしません。まったく話が繋がっていません(汗)。

 一方町では、誰と誰が戦っているのかよく解らない銃撃戦やカーチェイスが展開し、ジャッキーも相変わらず花束に仕込んだ爆弾や空中回転してからのナイフ斬りなどして人を殺しまくっています。そして美術監督とファニーがジャクソン一味に誘拐され、港に浮かぶ船に監禁されます。ジャクソン社長はファニーに「君の操(みさお)をもらおう」と昭和オヤジ構文で舌なめずりしています。翌朝、ジャッキーも乗船する香港警察巡視艇とジャクソンの船が銃撃戦を展開。ジャッキーに追い詰められたジャクソンは、その場で拳銃自殺します。命をやり取りするほど物騒な香港映画界にはビックリです。

 そっちは解決しましたが、別荘では腐霊泥がシンディに「人間の女とヤリたい」と欲望をむき出しにしています。さらに「私は昔は人間だったが、地獄から来た中国最後の悪夢男・腐霊泥だ」と、言っている意味がよく解りません。シンディは腐霊泥に血を吸われて死亡、そこへディクソンが駆け付けますが......そう言えば映画も残り5分を切っているのに、ロボ道士が出てくる気配すらありません。そこでディクソンが手の平を合わせ独楽のようにクルクル回転し始めます。すると白ニンジャではなくロボ道士に変身!

 だがこれだけじゃ終わりません。両雄が戦っている隙に2体の雑魚キョンシーがジョイスを食べようとすると、エイリアンに寄生されたように彼女の腹が膨らみ始め「パン!」と破裂。中から子供のキョンシー、ラストエンペラーこと溥儀のキョンシーが飛び出てきました。溥儀キョンシーが2体のキョンシーにオシッコを掛けて暴れていると、「やめろ! 仲間だ」と冒頭で予言した道士が現れます。ロボ道士が腐霊泥を地獄へ送り返すと、道士はキョンシー達を連れて退散します。なぜディクソンがニンジャでロボ道士になったのかは、劇中で一切語られませんでした。

 シンディの遺体はその場で山に埋められます。シンディの写真が遺影として貼られ、手書きで十字架と名前が書かれた手作りの墓の前で泣くジョイス、ローレンス、ディクソン。いや、そこらへんに遺体を勝手に埋めちゃダメだし。すると、お墓の前の地面から鉄の爪が出てきて「完」。これは予測できました!

 前回『ロボハンター』が2作以上の作品のフィルムを繋げて1本にするニコイチ映画だった事を述べましたが、今回もそのようです。探偵ジャッキーが出る場面は既存のアクション映画で、ロボ道士とニンジャがキョンシーと戦う別荘シーンを撮り足したのでしょう。フィルマーク社、恐るべし!

(文/シーサーペン太)

【著者紹介】
シーサーペン太(しーさー・ぺんた)
酒の席で話題に上げても、誰も観ていないので全く盛り上がらないSF&ホラー映画ばかりを死ぬまで見続ける、廃版VHSビデオ・DVDコレクター。「一寸の駄作にも五分の魂」が口癖。

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