もやもやレビュー

【無観客! 誰も観ない映画祭】第11回 『巨大タコ! 人喰い鮫! ディープ・トレジャー』

『巨大タコ! 人喰い鮫! ディープ・トレジャー』
1974年・西ドイツ、南アフリカ合作・89分
監督/ハラルト・ラインル
脚本/ユルゲン・ゴスラー
出演/ホルスト・ヤンソン、ハンス・ハース・ジュニア、モニカ・ルンディ、マリウス・ウェイヤーズ、サンドラ・プリンスローほか
ビデオ題『カリブ海の秘宝』

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 テレビ放映における劇場未公開作品の視聴率は、タイトルに懸かっているといっても過言ではありません。原題の直訳では視聴者の興味を惹かなそうな場合、番組制作会社は刺激的なキャッチコピーを並べ臆面もなく流行に便乗した放映題をでっち上げます。どんな嘘をつこうが、朝刊の番組表をチェックする人に「お、今夜はコレ観よう」と思わせたら勝ちなのです。

 水野晴郎さんの解説が楽しかった『水曜ロードショー』(日本テレビ系)。1977年8月3日は『巨大タコ! 人喰い鮫! ディープ・トレジャー』でしたが、そんな題名の映画はこの世にありません。ドイツ語の原題は『死んだダイバーに黄金の分け前はない』といった意味のタイトルで、原作はゲシュタポ出身のハインツ・G・コンサリックが書いた小説です。この年の6月11日に『ジョーズ』(75年)を怪物ダコでパクった『テンタクルズ』が公開されました。そして7月23日には『ジョーズ』と同じピーター・ベンチリー原作による『ザ・ディープ』というスペイン沈船の財宝探しを描いた映画が公開されました。ジョーズに食われたクイント役のロバート・ショウが主演です。そんな背景で『水曜ロードショー』の制作スタッフがタイトルを捻り出したことは想像に難くありません(のち『黄金のディープ』で再放映)。

 16世紀に略奪したマヤ文明の遺物や財宝(時価15億円)を積んだまま沈んだスペイン船ゼフィルス号。その位置を印した海図を、若き考古学者ピーター・ダムス、親の金を盗んで宝探し資金に充てるハル、その恋人エレンの3人が入手します。しかし情報は悪党共に漏れていました。まず地元ダイバーのシャグランが自分の女パスカルを使って、ダイビングのインストラクターを探している3人に接近します。シャグランは事故に見せかけ全員を殺し、財宝を横取りする腹です。セスナ機や何隻もの船舶を有する地元の悪徳古美術商ペドロも宝を狙っています。

 ゼフィルス号が沈む海域まで、機関銃やライフルを積んだシャグランのオンボロ船が出航します。女性は基本、面積の小さなビキニかノーブラTシャツという出で立ちです。最初のダイビングで3人は海底に横たわる大きなタコを発見します。ミズダコでしょうか「ガオーッ」と鳴きました。いやタコは「ガオーッ」って鳴きませんよ! というか、これが「巨大タコ」か(トホホ)。ここでシャグランはピーターを事故死させようとして失敗します。パスカルに色目を遣うピーターと、それに満更でもない彼女にヤキモチを焼いていたので真っ先に消えてもらおうとしたのです。

 今に自分も殺されると感じたパスカルは、シャグランが単独で2回目のダイブに入った海面に生肉を放り込みます。そこへ出ましたシュモクザメ! Tの字に飛び出た両目がキモイ、獰猛で知られる通称ハンマーヘッドです。「ケージ(身を守る檻)を下ろせ!」というシャグランの無線をパスカルは無視します。命からがら甲板に上がってきたシャグランがパスカルを殴っていると、ピーターがパスカルを救うためにナイフを抜いて駆け付け、ハルも慌てて仲裁に入ります。さらに、パスカルとエレンの仲も悪くて船上は険悪な雰囲気に。

 そうこうしているうちにゼフィルス号は発見され、骸骨が転がる船内で宝箱の山を発見します。上機嫌になった彼らの前を口先にトゲみたいなモノが付いた青い小魚が横切ります。「カワイイ魚だ」「ふふふ」「番兵かな」などと3人が和んでいると、ピーターがそいつに背中をチクッと刺されて苦しみ出します。この謎の毒魚、作り物のトゲを無理やりくっ付けたような違和感があります。欲に目が眩んでいるシャグランは、ピーターを病院に連れて行きたいハルに銃口を向け、宝箱の引き揚げ作業に入ります。哀れ毒が回ったピーターは死亡し、水葬にされます。

 ここで宝の引き揚げを見計らっていたペドロの大船団が略奪に現れます。こちらは女子2名を含むたったの4名で、シャグラン以外は銃器の素人。しかし、いざ戦闘が始まると2人のお姉様がビキニ姿で「ダダダダ!」とカッコよく撃ちまくり、これがことごとく命中してペドロ船団を退却させます。次の攻撃に備えてハルが陸まで泳いで海上警察を呼びに行き、その間にシャグランは時限爆弾を敵の船底に取り付けていて誤爆で死亡、セスナ機で飛んできたペドロはエレンが一発で射殺しました(いや無理だって!)。

 警察艇に乗ってハルが戻ると、主任から「メキシコ領内なので政府が全部没収」と言われてチャンチャン。命懸けで宝探しをした彼らに主任は一袋だけ渡し、シャグランに対しては「死んだダイバーには分け前なしだ」と原題を台詞にして締めます。サメと巨大ダコは誰も食わず、要するに荒唐無稽な海洋アクション映画でした。

 元々この作品は『ジョーズ』公開前年の1974年に製作されたのですが、まずレンタルビデオの普及によりアメリカで1984年に『DEADLY JAWS』という便乗タイトルでビデオ化されました。それを1988年に日本でコロンビアビデオが『カリブ海の秘宝』と何の捻りもないヤル気なしのタイトルで発売したのです。普通に『デッドリー・ジョーズ』か『死のジョーズ』でよかったのではと思います。

 ハラルト・ラインル監督は、アパッチ族が活躍するドイツ製西部劇などのアクション映画を得意とする傍らドキュメンタリーにも定評があり、UFOマニアに有名なエーリッヒ・フォン・デニケンのノンフィクション『未来の記憶』の映画化『神々の戦車』は、アカデミー長編ドキュメンタリー賞にノミネートされています。ラインル監督は1986年、余生を送っていたスペイン領カナリア諸島の老人ホームで、元女優でアルコール依存症の妻に刺殺され生涯を閉じました。

(文/シーサーペン太)

【著者紹介】
シーサーペン太(しーさー・ぺんた)
酒の席で話題に上げても、誰も観ていないので全く盛り上がらないSF&ホラー映画ばかりを死ぬまで見続ける、廃版VHSビデオ・DVDコレクター。「一寸の駄作にも五分の魂」が口癖。

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