もやもやレビュー

修復したい関係があるのなら『ストレイト・ストーリー』

ストレイト・ストーリー デヴィッド・リンチ スタンダード・エディション Blu-ray
『ストレイト・ストーリー デヴィッド・リンチ スタンダード・エディション Blu-ray』
リチャード・ファーンズワース,シシー・スペイセク,ハリー・ディーン・スタントン,エヴェレット・マッギル,デヴィッド・リンチ
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遠くに住むあの人に、どうしても会って話がしたい。ところがその人に会いに行ける交通手段もなければ、近くまで行けたところで少しばかりの距離を歩ける体力もない。そうなったらもう誰かに連れて行ってもらうか、諦めるか、の二択しかないように思えてくる。

『ストレイト・ストーリー』(1999年)に出てくる73歳のおじいちゃん、アルヴィン・ストレイト(リチャード・ファーンズワース)は、いずれの選択肢も選ばなかった。足腰は弱く、運転免許証もない彼が、なんとしてでも隣の州にいる兄ライル(ハリー・ディーン・スタントン)に会いに行こうと移動手段に選んだのは、庭で乗り慣れていた芝刈り機だった。移動の想定距離は、約560キロ。彼がヨイショとまたいだ芝刈り機は自転車に追い越されてしまいそうなほどノロく、目的地に行くには軽く1カ月以上はかかる。

そこまでしてでも会いに行くと決めたのは、ライルが心臓発作で倒れたという知らせを受けて。長いこと絶縁状態にあった仲を、命があるうちに修復することが彼の目的だ。

一度崩れた関係を立て直そうと歩み寄ることには、ある程度の勇気とエネルギーが求められる。なにせ、話したくないと追い返されてしまうかもしれない。そのうえ、ライルの家までの道のりは田んぼ以外何もないような道ばかりだ。アルヴィンの身に何かあったら、すぐに助けはこないかもしれない。それらすべてを覚悟のうえ、ライルのもとへと向かうアルヴィンを見ていると涙が溢れる。

どうにもならない関係も、もちろんある。でも自分に意味のあることなら賭けに出るのもまた、人生なのだろう。

(文/鈴木未来)

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