もやもやレビュー

カフェでの盗み聞き好きにおすすめしたい『コーヒー&シガレッツ』

コーヒー&シガレッツ(字幕版)
『コーヒー&シガレッツ(字幕版)』
ロベルト・ベニーニ,スティーヴン・ライト,ジョイ・リー,サンキ・リー,スティーヴ・ブシェミ,イギ-・ポップ,トム・ウェイツ,ジョー・リガーノ,ヴィニー・ヴェラ,ヴィニー・ヴェラ・ジュニア,ルネ・フレンチ,E・J・ロドリゲス,ジム・ジャームッシュ,ジム・ジャームッシュ
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逃走し続ける人物を写した映画もハラハラするけれど、あまり親しくない人が二人、コーヒーとタバコを片手に会話する姿もなかなかハラハラしたりする。『コーヒー&シガレッツ』(2003)で、コーヒーを飲みながら会話する伝説のミュージシャンたち、イギー・ポップとトム・ウェイツの姿こそがそうだ。

本人役で登場する二人は、はじめましてのセッティング。のっけからトムは威圧的な態度をぷんぷんと漂わせている。彼のご機嫌をとるように、緊張しながらも愉快に会話を進めるイギー。禁煙していた二人があっさりとタバコを吸いはじめると緊張はしばし解けるが、踏み間違えるとドーンと爆発する怒り爆弾をトムが持っているのはたしか。たった10分程度の会話なのに、イギーが爆弾をいつ踏むのかとヒヤヒヤして、なかなか落ち着けない。

補足までに、ジム・ジャームッシュが監督を務める本作は11の作品を詰め込んだオムニバス形式なので、張り詰めた空気が苦手な人もご安心を。それぞれの話には家族、友人、ほぼ何も知らない人たち同士とさまざまな人が登場し、どの話にもコーヒーが注がれたコップ(例外で紅茶もある)とタバコと会話がある。少し単調に聞こえるかもしれないが、20分弱の話には「これ、私かも」と共感を呼ぶようなものから、近所のカフェではなかなか聞けないヘンテコな会話まで、しっかりとニヤニヤさせてくれる。カフェでつい盗み聞きしてしまう人には、とくにたまらない作品かもしれない。

(文/鈴木未来)

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