フェラガモがインスピレーションを受けたSF傑作 『ガタカ』
- 『ガタカ [DVD]』
- イーサン・ホーク,ユマ・サーマン,ジュード・ロウ,アラン・アーキン,アンドリュー・ニコル,アンドリュー・ニコル,イーサン・ホーク
- ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
- >> Amazon.co.jp
- >> HMV&BOOKS
サルヴァトーレ フェラガモの2021秋冬コレクション「FUTURE POSITIVE」の写真をたまたま見つけて、随分とレトロフューチャーだなぁ(スタートレックみたいなニットもあった)と思っていたのだが、着想を得たという作品に『マトリックス』と共に挙げられていたのが『ガタカ』だったから驚いた。どちらも90年代後半のSF映画だが、マトリックスと違い、ガタカは話題に挙がることが少ないように思う(でも、すごく面白い)。こんないいタイミングはないので是非とも紹介したい。
舞台は近未来。遺伝子操作により欠点なく生まれた「適正者」の人間が繁盛するなか、自然妊娠の人間は「不適正者」と烙印を押され、夢を持つことも許されない。それでも不適正者のヴィンセント(イーサン・ホーク)は、宇宙飛行士になるという夢を諦めることができない。事故で歩けなくなった元水泳選手、ジェローム(ジュード・ロウ)と出会い、ジェロームの協力のもと、偽りの身で夢を追いかけることに......。生きる意味を問い続ける二人の友情と挑戦が繊細に描かれており、若きイーサン・ホーク、ジュード・ロウ、ユマ・サーマンの憂いを帯びた演技も素晴らしい。しかし当時は『メン・イン・ブラック』や『フィフス・エレメント』がヒットしていた頃。地味な印象で埋もれてしまったのだろうか。
さて、フェラガモのコレクションに話を戻そう。クリエイティブ ディレクターのポール・アンドリューによると「歴史や伝統に引き戻される傾向にある」ファッションを改めて見つめ直し、「未来の欠片を通して現在を見据える」クリエーションを目指したと語っている。それも、また『ガタカ』の劇中を思わせる。遠い未来を描いた作品だが、現在を見ているような錯覚も覚える。こんなこと起こるはずはない、と思っていた20年前でなく、今見るからこそ面白いのかもしれない。
(文/峰典子)