アルゼンチン史上最凶の犯罪者をもとに描いた『永遠に僕のもの』
- 『永遠に僕のもの [Blu-ray]』
- ロレンソ・フェロ,チノ・ダリン,ダニエル・ファネゴ,メルセデス・モラーン,ピーター・ランサーニ,ルイス・ニェッコ,セシリア・ロス,ルイス・オルテガ
- ギャガ
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ドロボーにはすぐに物怖じしない、ある種の冷静さが求められる。ところが誰だって、いざとなれば少しはビクッとしてしまうものではないか。アルゼンチン映画『永遠に僕のもの』(2018年)の主人公、カルロス(ロレンソ・フェロ)はというと、のっけから盗みに入った家でレコードをかけて踊っている。アレ、盗みの最中よね...と、むしろこっちが不安にさせられる。
茶目っ気のあるイタズラっ子ねぇなんて思うかもしれないが、そんなにかわいいものではない。カルロスとは20歳になるまでに、11人の連続殺人のほかに殺人未遂、強盗、強姦、性的虐待などあらゆる罪を犯し、いまなお刑務所に閉じ込められているカルロス・ロブレド・プッチのことである。本作では彼が捕まるまでの道のりを、シビれるアルゼンチン・ロックをバックに、鮮やかな色調で映し出している。話の細部は監督のルイス・オルテガにより大きく書き換えられていて、実話よりもいくらか描写がソフトである。
ちなみにプッチが話題になったのは、罪の数だけじゃない。「天使のようなルックスの彼が、どうしたら犯罪者になんかなれるんだ」。俗に言うイケメンが悪さをするなんてありえないとでも言うかのように、メディアは騒ぎ立てた。ところがそんなことよりも気になるのは、なぜ彼が心配をかけた両親にも、近しいパートナーにも、あんなに冷酷でいられるか、である。せめてでも映画の中の彼を理解できないかと、繰り返し観てしまいそうになる一本である。
(文/鈴木未来)