パンデミックの中で人を愛するということ『パーフェクト・センス』

　新型コロナウイルスのパンデミックが発生してからもう1年以上経ちますが、コロナ禍で出会いの場も少なくなり、人をどうやって愛したらいいのか、どうやって恋愛関係を築いたらいいのかわからなくなった人も少なくないと思います。そこでおすすめなのが、映画『パーフェクト・センス』。本作では原因不明の病が蔓延し始めた時に出会った二人の恋愛模様を描いています。

　感染症の研究者であるスーザン（エバ・グリーン）。彼女はある日、病室に運ばれてきた患者の症状を確認することに。その患者は、嗅覚を失ってしまったと言います。しかし彼の症状から見て、スーザンたちは「人から人への感染はない」と考えていました。しかし、発症者はイギリスのみならず、世界中で確認されてしまうのです。発症者は第一段階で悲しみの感情が溢れ出し、その後は嗅覚、そして恐怖を感じた後に味覚がなくなる......徐々に精神をやられながら、五感をも失っていってしまうのです。そんな中スーザンは、アパートメントの窓から見えるレストランで働いているマイケル（ユアン・マクレガー）と出会い、パンデミックの中、関係を築き上げていきます。しかし、二人にも症状が現れ始め......。

　本作で描かれているのは、次第に五感が奪われていく原因不明の病。それは「悲しみ」「恐怖」「怒り」という感情が一定時間抑えきれなくなるという特徴をもっています。そんな奇病にかかってしまった人同士で、信頼関係を築き上げていくなんて不可能にも近いように思えますが、ふたりはこの状況下だからこそ、絆を深め合っていきます。パンデミック禍で街も秩序が保たれていない状態の中、必死に生き抜く人々の姿も描かれている本作。辛い状況でも支え合う姿を見て、改めて何か大切なことを学べたような気がします。本作観賞後は、身近な人をより大切にしたくなるし、コロナ禍で人間関係を築くことは不可能ではないと背中を押してくれます。

（文/トキエス）