もやもやレビュー

そばにいてこそ家族『家族を想うとき』

家族を想うとき[DVD]
『家族を想うとき[DVD]』
クリス・ヒッチェン,デビー・ハニーウッド,リス・ストーン,ケイティ・プロクター,ロス・ブリュースター,ケン・ローチ
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不条理な労働条件で働くことがおよぼす心の負担は、働く本人だけでなく、彼らを支える大事な家族にもしみわたる。ケン・ローチ監督の『家族を想うとき』(2018年)はその様子を痛いくらいに突き刺してくる。

2児の父親リッキー(クリス・ヒッチェン)は、宅配ドライバーの仕事をはじめたばかり。家族が安心して暮らせるマイホームを手に入れようと意気込んではじめた仕事である。ところが正社員としては雇ってもらえず、フランチャイズのドライバーとして独立することに。稼ぎは自分の力量次第、という言葉にそそられて個人事業主になったはいいものの、常に監視される上に、休めば罰金が発生する仕組みを後に知る。おかげで彼は働きっぱなし。一方、妻のアビー(デビー・ハニウッド)は介護福祉士として朝7時から夜9時まで拘束され、貴重な家族との夕飯ですら呼び出しをくらう始末。子供たちの幸せを思って働く二人だけれど、肝心の家族との時間は減るばかり。子供たちの寂しさも静かに増していく。そんななか、停学処分を与えられた高校生の息子、セブ(リス・ストーン)にリッキーが手を上げると、家族の絆も勢いよく崩れていく。

小学生のライザ(ケイティ・プロクター)はもちろん、強がりのセブでさえ必死に親との時間を確保しようとする姿を観ていると、親が子供のそばにいてあげることがどれほど大切なことかがひしひしと伝わってくる。人間を人間として扱わない労働環境が、その大切な時間を奪っていると思うとやるせない。

(文/鈴木未来)

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