もやもやレビュー

恋愛とプリン『パンチドランク・ラブ』

パンチドランク・ラブ [DVD]
『パンチドランク・ラブ [DVD]』
アダム・サンドラー,エミリー・ワトソン,フィリップ・シーモア・ホフマン,ルイス・ガスマン,ポール・トーマス・アンダーソン
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プリンのおかげで大量のマイレージポイントを手に入れた伝説の陸マイラー、「プリン男(本名:デヴィッド・フィリップス)」をご存知だろうか。時は1999年。ヘルシー・チョイス社では、たった25セント(約27円)で買えるプリンについたバーコードを送るだけで、500マイルがもらえるキャンペーンを行っていた。「オヤ、購入価格を大幅に上回るマイルがもらえるじゃないか」と、1万個以上のプリンをせっせと買い占めたプリン男。最終的には30万円ほど割いたものの、彼のもとにはアメリカ本土からヨーロッパまで約30往復もできるマイレージポイントが無事、届けられた。

このウソのようなホントの話が使われているのが、ポール・トーマス・アンダーソン監督の「パンチドランク・ラブ」(2002年)である。アダム・サンドラー演じる主人公のバリーこそが、プリン男。ただ、カラクリを発見してプリンを大量購入するのは話のほんの一部。メインは彼の恋愛話である。

アンダーソン監督が作り上げたプリン男は、ナヨナヨしていてちょっぴり孤独な30代男性。ところがある日、姉の友達であるリナ(エミリー・ワトソン)に出会うと、心細い日々に希望の光が差し込む。二人はあっという間にくっつきそうなものの、バリーはさみしさゆえに以前利用したテレフォン・セックスの運営会社から「お前は死んだも同然だ」と脅されてしまい...。

わずかなスリルを絡めた恋愛ものでありながら、シュールなユーモアも本作のミソ。恋のしわざでなかなか大胆な行動に出るバリーを画面越しに応援したい。

(文/鈴木未来)

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