もやもやレビュー

オジサン万歳!『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』

シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢 [DVD]
『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢 [DVD]』
マチュー・アマルリック,ギョーム・カネ,ブノワ・ポールヴールド,ジャン・ユーグ・アングラード,フィリップ・カトリーヌ,ジル・ルルーシュ
Happinet
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HMV&BOOKS

シンクロナイズド・スイミングと検索すると、優雅なポーズをしているオジサンはあまり出てこない。一方、フランス映画の『シンク・オア・スイム』(2018年)では、中年男性軍団がシンクロに取り組む姿をたっぷりと観ることができる。

水にポチャンと飛び込むと、おなかまわりがぷるんと揺れる。本作を彩るのは、少し脱力した体型の中年男性8名。彼らは週に2回、地元の公営プールで泳ぐ男子シンクロチームに所属している。練習をし、サウナで汗を流し、帰路に向かう。ちょっとした息抜きに泳いでいるのかと思いきや、うつ病で休職している、会社が破産しそう、家族が崩壊しそう...と、一人ひとりが抱える悩みはなかなか深刻。

そんななか、シンクロチームのメンバー、ティエリー(フィリップ・カトリーヌ)は男子シンクロ世界選手権の出場者募集ページをネットで発見。メンバーのみんなで妄想を膨らませているうちに、彼らはこれまでにないドキドキとワクワクに包まれ、「我々も出てやろうじゃないか」と応募ボタンをポチっと押すことに。ところがそこからは「メタボども!」「転がる芋!」などとトゲだらけの言葉を投げるスパルタコーチのもと、練習に取り組むことになる...。

「もうウンザリだ!」とワメきながらも、懸命に練習に励む彼らを観ていると自然と胸がアツくなってくる。いくつになっても全力で戦えば、何にも変えられない経験となる! 感動したいときにも、笑いたいときにも、怠けた心に活を入れたいときにもぴったりの一本である。

(文/鈴木未来)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム