もやもやレビュー

ハトに愛着が湧く『ゴースト・ドッグ』

ゴースト・ドッグ [DVD]
『ゴースト・ドッグ [DVD]』
フォレスト・ウィテカー,ジム・ジャームッシュ
パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
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公園に行っても大都会に出かけても、何かと視界に入り込んでくる鳥、ハト。生きてるうちに何度も遭遇しているのに、そっと近づいても逃げられるばかりで、なかなか距離を縮められない。でも、思えばハトは長いこと、人間と親しくしてきた鳥でもある。たとえば伝書バトは、古代オリンピックの優勝者を発表するためにも、第一次世界大戦で大事な伝言を届けるためにも頼りにされてきた。

現代で活躍する伝書バトの姿は、ジム・ジャームッシュ監督の『ゴースト・ドッグ』(1999年)で見ることができる。ここでは武士道精神が書かれた「葉隠」を聖書のように扱う殺し屋、ゴースト・ドッグ(フォレスト・ウィテカー)が、ボスへの任務終了報告をするために伝書バトを使う。ゴースト・ドッグは一見イカツイ。がたいは大きく、服装はほぼいつも全身黒。でも自宅の屋上バルコニーにある小屋から、50羽ほどのハトを一斉に空へと解放すると、幸せそうな、やわらかい笑顔を見せる。側から見ればハトおじさんだが、殺し屋として孤独な人生を送る彼にとって、ハトは家族のようなものなのだ。

本作の真ん中あたりに、自分の指にとまったハトをゴースト・ドッグがやさしく撫でるシーンがある。ハトに逃げられた思い出を振り返りながら、こんなにも打ち解けてくれるものなのかと少しうらやましくも感じた。昔のように伝書バトを頼りにすることはもうあまりないかもしれないけれど、鑑賞後、ほんのりあたたかい眼差しをハトに向けられるようになる可能性は濃厚である。

(文/鈴木未来)

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