もやもやレビュー

誰かに相談してもなんだかスッキリしないあなたへ『ナイト・オン・ザ・プラネット』

ナイト・オン・ザ・プラネット(字幕版)
『ナイト・オン・ザ・プラネット(字幕版)』
ウィノナ・ライダー,ジーナ・ローランズ,ロベルト・ベニーニ,ジム・ジャームッシュ,ジム・ジャームッシュ
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心のうちを素直に打ち明けるのはなかなか難しい。たとえば勇気を振り絞って持ち出した話を、「それよりさ、この前......」とアッサリ別の話題にすり替えられた日には、心にぴゅ〜と冷たい風が吹く。とはいえ「そんながっかりは回避したいから、いわないでおこっ......」と、心にしまいこんでばかりいると、感情がどこかで大爆発してしまうことも。ということで、打ち明け上手になるために、観ておきたい映画がある。

タクシーのなかでの5つのストーリーが詰め込まれている、ジム・ジャームッシュ監督の『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1991年)である。本作ではロサンゼルス、ニューヨーク、ローマ、パリ、ヘルシンキの夜景を窓越しに、乗客と運転手とで絶妙な会話のキャッチボールが行われる。たとえば羊で欲求不満を満たしていたと乗客に暴露する運転手(ロベルト・ベニーニ)がいたり、出会ったばかりの乗客に「私をちゃんと愛してくれる男と結婚したいの」とスラスラ打ち明ける運転手(ウィノナ・ライダー)がいたり、子供を亡くしたことを淡々と語る運転手(マッティ・ペロンパー)がいたりする。

どのストーリーにおいても、相手がなんと言おうとお構いなしであるところが特徴的。変に身構えることもなく「いいたいことをそのまま相手に伝えるぞ〜」というお気楽さで、会話が成り立っている。そもそもがっかりしてしまうのは、変な緊張感と期待を持って会話に挑んでいるからかもしれない。まず期待はきれいさっぱり取り除こう。相手の言葉を押しのけてでも自分の思いを伝え切ろう。気楽に腹を割る詳しい方法は、本作からお確かめあれ。

(文/鈴木未来)

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