もやもやレビュー

エマ・ワトソンの決死の救出劇『コロニア』

コロニア(字幕版)
『コロニア(字幕版)』
エマ・ワトソン,ダニエル・ブリュール,ミカエル・ニクヴィスト,リチェンダ・ケアリー,ヴィッキー・クリープス,トルステン・ヴェンツェル,フロリアン・ガレンベルガー,フロリアン・ガレンベルガー
商品を購入する
>> Amazon.co.jp

正義感が強く、意志の固い役がエマ・ワトソンによくはまっている。素の彼女のようでもあるし、ハーマイオニーもどこか透けて見えるようで。

時は1973年。エマが演じるのは、ルフトハンザ航空の客室乗務員のレナ。この制服姿がまずかわいい。(冒頭でしか見られないから、見逃さないでほしい。) 飛行機が向かうのはチリ・サンティアゴ。ピノチェト軍事独裁政権下のチリでは、大統領派と反大統領派に別れての抗争が繰り広げられており、レナの恋人で写真家のダニエル(ダニエル・ブリュール)はチリに長期滞在中。大統領派のデモにも参加し、街頭演説を行っている。

レナは復路までの数日、ダニエルと過ごす時間を楽しむが、突如チリ軍がクーデターを起こし、混乱の最中ダニエルは軍に捕まり連行されてしまう。ダニエルが連れて行かれたのは、慈善団体の仮面をかぶったカルト教団「コロニア・ディグニダ」。難を逃れたレナはダニエルを救い出すべく、単身コロニアに向かう。

教祖パウルが暴力で支配するコロニアは、一度入ったら二度と生きて出て戻れない所だった。レナは信者に成りすまして入所し、ダニエルとの接触を試みる。一方、ダニエルは何度か脱出を試みるものの、いずれも失敗に終わっていた。果たして、逃げ切ることができるのか......。

にわかには信じがたいが、実はこのコロニア、実話なのである。内部の生活の模様は、すべてが取材に基づいた真実。死人を蘇らせようとする儀式も、生存者の証言をドキュメンタリー的に再現したものだという。教祖は2010年にサンティアゴの刑務所で死亡。つい10年ほど前まで生きていたと聞くと、事件をよりリアルに感じる。

(文/峰典子)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム