もやもやレビュー

作り、食べては、書きの日々『ジュリー&ジュリア』

ジュリー&ジュリア (字幕版)
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混乱のなかの日本列島である。震災時もそうだったが、こんな時には、地に足の着いた幸せが何よりありがたく思える。例えば、新鮮な食材を買ってきて、それを料理して、家族で食べるというようなこと。おにぎりだっていいし、焼きそばだっていい。身体の隅々に行き届いた栄養が血となり肉となり、未来の自分をつくる。

『ジュリー&ジュリア』の主人公、元作家志望のジュリー・パウエルは、ニューヨークに暮らす平凡なOL。やりたくもないオフィスワークに退屈し、夢中になれるものがないか、日々悶々としている。そこでジュリーが始めたのが、この作品の舞台である02年当時、まだ登場したばかりのブログだった。

書くと決めたものの、何をネタにしようか。彼女が見つけたのがジュリア・チャイルドの料理本。日本では馴染みの薄い名前だが、アメリカにフランス料理を広め、60年代の台所に革命を起こした有名料理研究家である。彼女は365日という制限付きで、ジュリアの書籍『フランス料理の達人』に掲載されている全ての料理を作ってみることにした。その数なんと524! ただ挑戦するだけではない、その過程を全てブログで公開するのである。

ここまで書いてお判りかもしれないが、これは実話。ブログ「ジュリー/ジュリア・プロジェクト」は人気サイトとなり、書籍化され、メリル・ストリープとエイミー・アダムス主演で映画化......と、現代のインスタグラマーも夢見ているだろうサクセス・ストーリーである。

ジュリア・チャイルドがどのように料理家になったのか、時代の行き来を楽しめる構成になっている。さらに言うと、ブログの成功時、ジュリアに手紙を出したジュディ。その二人の関係は、とてもリアリティのあるものだ。(そのあたりはそこまで脚色していないのだろう)

(文/峰典子)

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