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「もう好きじゃないかも」?考えるのをやめて『ビューティー・インサイド』を観てみる

ビューティー・インサイド [Blu-ray]
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ギャガ
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 「彼氏のこと、好きかどうかわからなくなった」。女友達から、人生で幾度となく持ちかけられた相談ごとのひとつです。彼のことを語る言葉や態度から、友人の胸の内を推しはかって「もう冷めちゃってるのかも」と言ってみたり、「まだ好きなんじゃない?」と返してみたり。でも、どんなに懸命に耳を傾けても、「好き」という思いは他人にははかれないもの。
 『ビューティー・インサイド』は、そんな友人のような、自分で自分の気持ちがわからなくなってしまったひとにおすすめしたい映画です。

 主人公は、眠って目が覚めると外見が変わってしまう男の子、ウジン(キム・デミョン)。人と顔を合わせないで済むよう、インターネットでの取引を中心とした家具デザイナーとして働くウジンは、家具屋で働くイス(ハン・ヒョジュ)と出会い、恋に落ちます。顔が変わってしまわないよう、三日三晩寝ずにイスに会いにいくウジン。努力の甲斐あって結ばれ、手に入れたしあわせな日々。

 しかし、結ばれたことをきっかけに、物語はファンタジーめいたラブストーリーから一変。イスをとおして、ウジンの体質によりもたらされる苦悩がまざまざと描かれます。毎日姿が違うウジンに慣れることができず、彼が自分に触れるとき、好きな人は「この人だ」と言い聞かせずにはいられないイス。好きなはずなのに、いっしょにいると苦しい―イスは疲弊し、ウジンへの思いにも自信を失っていきます。

 そんなとき、イスは父親に、他界した母が生きていたら何をしたいかたずねます。父親は笑ってこたえます。「いっしょに年を取ること」。
 特別な何かではなく、ただそばにいて、いっしょに年を重ねていきたい。シンプルで切実なその願いは、「好き」という感情がどんなものか、言葉少なに教えてくれます。

 ウジンとイスの物語は、そのまま結末へ向かいます。
 だれかと付き合うこと、もっと言えば、だれかと生きていくということは、いっしょにいることで得られるしあわせもあれば、苦しさもあります。その苦しさから、イスのように自分の思いでさえもわからなくなってしまうときがあると思います。
 そんなときは、この二人の物語を最後まで見届けてみてください。エンドロールがはじまる頃には、自分のすなおな気持ちと向き合えているはずです。

(文/きくちゆいな)

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