バカ映画なのに金について考えさせる『ロボクロコ』
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B級映画にリアリティを求めたところで詮無い話だが、世の中には限度というものがある。本作は「メカ・トランスフォームSFアクション」という、よく分からない言葉をキャッチコピーにしている。しかし、米国の秘密兵器である名のマシンがワニの体を金属の殺戮マシンに変化させるというのは荒唐無稽すぎる。何と何が結合したらワニが金属になるのだろうか。本作はSF作品に必要な説明をすべて吹っ飛ばし、ワニが大暴れするだけの映画となっている。配給会社はいつものアルバトロスだし、まぁ仕方がない。
あらすじの説明など「ワニ大暴れ」で済んでしまうが、パッケージ裏のSTORYを引用すると「米軍が極秘開発した、ナノマシン・テクノロジー。それはミクロの粒子が目標の神経系に侵入、宿主を金属の殺戮マシンに変身させるという、驚異の新兵器だった。だが実験用ロケットが動物園に墜落、ナノマシン粒子がクロコダイルに寄生してしまう。金属の《ロボクロコ》に変身した巨大ワニは、動物園を脱走しファミリー・パークを襲撃。人々は次々とその餌食になってゆく。不死身の怪物を倒すため、軍は総力で戦いを挑むが......」とのこと。何を言っているのかさっぱり分からない。
そもそもスペースシャトルから自国の動物園に兵器を投下するとか、正気の沙汰ではない。テロリストもビックリである。
そういう荒唐無稽さも徹底すれば芸になるが、中盤以降は一気にだれる。軍部の会議だったりパークの人間のやり取りだったり会話劇となってしまう。「途中で予算足りなくなったのだろうなぁ」と、作品よりも制作陣の懐事情に意識が向く。
ちなみに最後はワニの口に爆弾を放り込んで爆破エンド。お茶を濁した感がすごい。
酷い作品ではあったが、ワニの皮膚が徐々に削げて金属がむき出しになるなど、勢いと雰囲気は良かった。中盤以降もテンションを持続させていれば荒唐無稽として笑えた作品になっただろう。会話劇でもノリが持続すればどうにかなっただろうに矮小な人間関係に収れんさせたのは悪手だった。B級映画にそういう要素は求めていない。
(文/畑中雄也)