クソ映画すぎて却って人気を博す『恐怖!キノコ男』
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低予算ゆえの雑な映像というのはB級映画を視聴し続けていると、そういうものとして意識から排除することができる。しかし本作は人間に布と帽子を被せてキノコと言い張る無茶苦茶な映像を提供してくれる。CGに至っては「それはキノコのつもりですか?」という、子供の落書き並みの画力。公開は2005年で21世紀。多分、学生の自主製作映画だってここまで酷くない。これを金払って視聴した自分の愚かさを呪いたくなる。
そんなイカれた作品に物語なんてあろうはずもないが、一応ジャケット裏の説明を基に書いていく。頭のイカれた科学者(無職のボンクラ)があらゆる生物を凶暴化させる謎の薬品を開発。養生のため郊外のペンションを訪れた科学者は転んだはずみでバッグから薬品をこぼし、自生していたマッシュルームにかけてしまう。マッシュルームは人を襲うモンスターに変化し、胞子を飛ばすことで増殖を始め――という内容。殺人マッシュルームは人にアンクルホールドを極めたり微妙に良いフットワークでパンチを繰り出したりする。キノコ感はゼロだ。ちなみに冒頭で襲われた人間の死体は雑な人形が転がっているだけ。意味もなく出演者がいるのだから誰かに死体役をやらせればいいのに......。
一事が万事この調子で何故か殺人キノコはバルサミコ酢で爆発するし超能力者のオッサンも爆発する。一から十まで意味が分からない演出の連続で、自分が目を開けて映画を観ているという現実に涙が止まらない。きっと外でも眺めていた方が人生にとって有意義だ。
最後はお約束の爆発。バルサミコ酢で地形が変化するという世界観に呆れを通り越して痺れる。そして科学者(ニート)がリンゴを持って不気味に笑ってエンディング。科学者が物語のキーなのかと思いきや、冒頭と最後にしか出てこない。何なのだろう、これは。
どこを切り取ってもクソ映画でしかないためか、本作は一部好事家から好意的な評価を得ている。皆で突っ込みを入れながらガヤガヤ観る分にはきっと楽しい映画なのだろう。しかし、一人で視聴したら色んなものに絶望してしまう。
(文/畑中雄也)