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やっぱり我が子はかわいい...のかも。『ビッグシック ぼくたちの大いなる目ざめ』

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パキスタンは未だ見合い結婚が一般的とされる国の一つである。しかし混同されがちなのが、「結婚したくなければ断れる」見合い結婚と「選ぶ意思が与えられない」強制結婚。メディアの影響で強制結婚が浸透していると思われがちだけれど、実際は見合い結婚のほうが一般的だとか。

とあるパキスタン女性は、この二つの違いを明確にしようと、見合い結婚の実情が知れるボードゲームをつくり注目を集めた。ボード上には「結婚しなさい!」とガミガミいう叔母がマスを陣取っており、カードを引き、指示に従いながらコマを動かしていく。できるだけ叔母と距離を置き結婚を遅らせた人が勝ちである。クラウドファンディングにも出されたこのボードゲームを見て、彼女の父親は「余計見合いが設定しにくくなるよ、アハハ」と冗談を飛ばしたとか。このように理解力がある人もいるものの、ムスリム教徒が多いパキスタンでは、結婚相手とでなければ夜の営みは犯罪とされており、男女関係に保守的な人が少なくないのも事実のよう。

ボードゲーム以外でパキスタンの結婚事情に焦点を当てているのは、ラブコメ映画『ビッグシック ぼくたちの大いなる目ざめ』(2017)。主演・監督を務めるパキスタン人の俳優・コメディアン、クメイル・ナンジアニと、白人である妻エミリー(ゾーイ・カザン)の実のラブストーリーである。見合い結婚どころか恋人は白人、そして結婚以前にエミリーは突然昏睡状態に(ここも実話)...さあどうなる?という本作品の脚本は、なんと夫婦での共同製作。少々ヘビーなのかと思いきや、ぐふっと笑えるハートウォーミングな一本である。

少しネタをバラしてしまうと、映画では白人エミリーとの恋仲を親に伝えたクメイルが勘当される、というシーンがある。しかし映画公開後、クメイル父は「ビッグシック」と書かれたTシャツを毎日着用(2017年時点)。そのうえクメイルの両親は映画館に何度も足を運び、パキスタン人の家族を見つけては「どうだった?主演の子、うちの息子よ」と自慢げに話しかけていたとか。国の慣習はさておき、やはり自分の息子はかわいいのかもしれない。

(文/鈴木未来)

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