もやもやレビュー

プロが作る失敗した学生の自主映画『ヘルケバブ 悪魔の肉肉パーティー』

ヘルケバブ 悪魔の肉肉パーティー [DVD]
『ヘルケバブ 悪魔の肉肉パーティー [DVD]』
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トランスフォーマー
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 ジャケットには血まみれの鉈を持った人物の脇に「野菜のつぎ、おまえ!」というキャッチが記されており、てっきり食人鬼が襲い掛かる内容だと思っていたら、登場人物が謎の狂人たちに何度も殺されるシーンを繰り返す。何がなんだかよく分からないままエンディングへ。脳内にひたすら浮かぶ疑問符に押しつぶされ、恐怖しようにも困惑だけが視聴後に残る。ジャケットに書いてある「衝撃のトルコ産ケバブホラー」の文字が詐欺のような煽りにしか見えない。

 あらすじを説明しようにも、全面的に雰囲気先行の作品のため書きようがない。強いて書けば、主人公を含めた警官5人が現場に召集されて主人公以外が殺される。最後に主人公も応援に駆け付けたパトカーにはねられ死亡。トルコ映画に詳しくはないけれど、ジャケットでトルコを強調するほどにトルコに対する侮辱となりかねない。

 主人公のトラウマらしき記憶と現実がリンクしているっぽいのだが、作品の中で何一つ伏線が回収されないため実際のところは不明。終盤、カルトの教祖のような人間に首を斬られた主人公の育ての親の首から謎のカギが出てくる。それを主人公が教祖の額に差し込むのだが何も起きない。最終的に教祖、主人公に椅子で撲殺されているし。

 意味深な台詞や回収されない伏線を眺め、これはどこかで観たことがあるなと考えていたら、学生の自主映画あるあるだったと気付いた時の脱力感はかなりのものだ。トルコ映画に詳しくないから本作の監督がトルコ国内においてどの程度の地位にいるのか分からないが、プロが失敗した学生の自主映画を作ってはダメだろう。

 本作の原題は『BASKIN』といい、意味は「浴びる」だという。タイトルのケバブはどこから出てきたのか。まぁB級映画の邦題はほとんど詐欺と変わらないので、そこに疑問を投げかけても空しいだけだが......。21世紀にもなって相変わらずジャケット詐欺で客を引く手法が現役という事実が一番のホラーかも知れない。何から何まで全部ひどい。

(文/畑中雄也)

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