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家族に諦めと愛を込めて『たかが世界の終わり』

たかが世界の終わり [Blu-ray]
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ジャン=リュック・ラガルスという劇作家がいる。18歳で演劇学校に入学し、1995年に38歳という若さで亡くなるまでの約20年間に、25本の戯曲を執筆した。没後に評判が高まり、今ではフランス国内で最も多く上映されている劇作家のひとりだという。『たかが世界の終わり』は、ジャンが1990年ごろにベルリンで執筆した戯曲で、グザヴィエ・ドランがそれを同タイトルで映像化したのである。

ドランが若干20歳、監督デビュー作『マイ・マザー』を完成した頃、母親役を演じたアンヌ・ドルヴァルから「絶対に読むべき」と、彼女がかつて出演した「Juste la fin du monde(たかが世界の終わり)」の戯曲を渡されたという。ピンとこなかったのか、読むこともなくしまいこんでいたそうだが、4年後に『Mommy/マミー』を撮影した直後、ふとしたきっかけで再び手にし、読み始める。「6ページ目あたりまできたところで、これこそが僕の次の映画だと決めていた」と、ドランはのちに語っている。

物語の主人公は、34歳のルイ。不治の病にかかり、久しぶりに実家に帰ってくる。家族に病を打ち明けるのが帰省の最大ミッションなのだが、家族のペースに巻き込まれ、なかなか打ち明けられないでいる様子を、会話劇として描いている。噛み合わない会話、戸惑いからの沈黙、レベルの低い喧嘩。それぞれリアルな欠点を抱えている家族と、それに対する諦め...。美化することなく人間くさく描いたところが、この戯曲の魅力。心許ない沈黙にも愛が存在しているのだと感じさせられる。

(文/峰典子)

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