もやもやレビュー

予告編と本編に乖離があり過ぎる『伊藤くんAtoE』

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 視聴する毎秒ごとに、つまらなさで死にたくなるというのは映画としてどうなのだろう。「多分、テーマはこういうことなのだろうな」というのはボンヤリと浮かび上がってくるのだけど、山場も何もない進行で視聴後の感想は「ようやく終わった......」という安堵しかない。

 内容は、アラサー童貞の痛々しい伊藤誠二郎(岡田将生)に振り回される4人の女性を、落ち目のシナリオライター・矢崎莉桜(木村文乃)がドラマ企画にしようとするというもの。
 結局、伊藤は全ての女性から見放されるのだが、そもそも「いくら顔が岡田将生でも、こんな奴がモテる世界線がどこにある?」という疑問を置き去りにして物語は進んでいく。そうした違和感がゴリゴリのところに、伊藤というキャラクターを通して等身大の女性を描こうという姿勢を打ち出すから、物語がとっ散らかる。おまけに矢崎と伊藤の脚本を巡る口論で、伊藤があがくことの恰好悪さを論じるのに対し、矢崎は「何度傷ついても私は書く」と反論する。

 この部分だけ切り出すといいこと言っているっぽいが、所詮は両人とも他人の相談をネタにしようとしたゲス。説得力が欠片もない。おまけに延々とつまらない平坦な脚本を見せられた上でその台詞を口にしているのだから絶句するよりない。本作が存在しなければ少なくとも時間を無為に過ごすことはなかっただろうことを思うと、つまらない上に作中で自己弁護しているようで腹立たしい。

 とは言え、小規模な上映作品だったら、深読みする連中があれこれ寝言をほざいて良作として扱われたかも知れない。しかし、こんなものを約160館で上映したのだから酷い話だ。予告編も妙にポップだし、実際は作家性が強すぎてポップの要素薄いし。
強いて美点を挙げれば、出演者が美形揃いなので無音で眺めれば2時間を耐えられるかも知れない。

(文/畑中雄也)

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