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すべては猫から学んだ『ボブという名の猫』

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古今東西、みんな猫が大好き。と言っても過言ではないかもしれない。米国のジャーナリスト・アーティストであるアリソン・ナスタシさんの著書『アーティストが愛した猫』を読んでみると「遺跡から発掘された遺物から、人々が猫の美しさに魅了されていたことがわかる」とある。古代エジプトでは、猫は神として崇拝されていた。「女神バステートが猫の頭をもつ女性として、ときには猫そのものとして描かれ、お守りがつくられた」のだという。

気ままな芸術家気質と相性がよいのか、アーティストたちも猫が好き。ダリもピカソもクレーも、クリムトもウォーホルもフリーダも、猫を飼っていた。人間が大っ嫌いというエドワード・ゴーリーだって、たくさんの猫の親友がいた。そして、ここにも猫に救われた人がひとりいる。

映画『ボブという名の猫』の主人公はその名の通り、ボブという名前のトラ猫。ホームレスで薬物依存症の青年ジェームズがボブと出会い、引き寄せられるように運命共同体となって、人生の針が少しずつ動き出していく。ドキュメンタリーではないが、限りなくノンフィクションに近い作品である。ジェームズを演じるルーク・トレッダウェイも、本人とどこか似た雰囲気である。猫の姿が可愛いことは間違いないのだが、ほっこりとした動物映画とは一線を画すのがこの作品。薬物、心の病、家族からの虐待、英国の抱える社会問題が浮き彫りになっているが、どれも脚色ではなく、ジェームズの経験してきたことだという。ジェームズは現在、ボブとのエピソードを複数冊にわたって書籍化し、薬物依存症の人に対してのボランティア活動を行っている。

ちなみに当初は俳優猫が7匹も用意されていたというが、思ったように演技できず、ボブ本人(猫)が全編に登場することとなった。プロ顔負けだったというボブの演技にも注目してほしい。

(文/峰典子)

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