もやもやレビュー

人生こじらせると妄想がはかどる『ルビー・スパークス』

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新しい彼なの。と言って友人から紹介されたのがロボットだったらどう思う? それが未来の話でもフィクションでもなく2018年の現実だったら。

フランス人女性のリリーさんは、ロボセクシャルを公言している。子供の頃からロボットが好きで、人間男性とも交際したけれど、最終的に行き着いたのは「ロボットを愛するしかない運命にある」という事実。そのために理想のロボットを作って一緒に暮らしている。ロボットとの婚姻が認められるようになったら夫婦になりたいそうだ。研究者のなかには、2050年にはロボットと人間が恋愛関係になっていると断言する人もいる。あと30年。けっこうすぐだよ!

『ルビー・スパークス』の主人公カルヴィンは、19歳で華々しくベストセラー作家になったものの、そこから鳴かず飛ばず(というか2作目すらまだ書けていない)、10年間という時間をかけてじっくりとこじらせ続けてきた。鍋についた焦げがこびりついて取れない。そんな感じ。

設定はベタ。スランプを抜けようと悪戦苦闘するカルヴィンは、自分のど直球タイプの女子「ルビー・スパークス」を小説に登場させる。さすがベストセラー作家なだけあって、リアリティ抜群。プレイガールズみたいなセクシー系でも、コンサバ美人というタイプでもない、ややビッチ風味でパープルのタイツや古着のワンピースを着こなしてしまうような、奔放キャラ。で!で!その女の子が現実世界に登場しちゃうんだな。

カルヴィンは意外と冷静。とりあえず小説を封印して、ルビーを現実世界に留めようとする。でも、こじらせ作家だから、恋愛もそううまくはいかない。終盤に向けてじわじわと狂気じみてくるから、ただのラブコメと侮るなかれ。監督はジョナサン・デイトン&バレリー・ファリス。このふたりは珍しい夫婦監督(前作は『リトル・ミス・サンシャイン』)。そしてカルヴィンとルビーを演じたポール・ダノとゾーイ・カザンは私生活でもカップル。この4人だからこそ、異色の設定をリアリティある映像に変換できたのかも。

(文/峰典子)

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