イタリア人・バリキャリウーマンの悲喜こもごも『これが私の人生設計』
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ある方が雑誌で紹介していたイタリア食材店が、それはそれは美味しそうだったので、近くに用があったときに寄ってみた。大きな飴玉のようなお菓子が転がっているのが目に入ったので聞いてみると、手ごねのチョコレートなのだという。もちろん迷いなく買う。帰り道すがら口に放り込むと、圧倒的に絶望の味。だって、引き返したくなるような美味しさだったのに、一個しか買わなかったものだから。
朗らかで太陽みたいだったイタリアのチョコレート。そこに生まれ暮らす人たちの国民性も大らかで非常に前向きである。日本では「終わりよければすべてよし」だけど、イタリアは「初めが良ければ仕事は半ばできたようなものだ」という。日本では「信じる者は救われる」っていうけど、イタリアでは「信ずるは良し、信じないのはもっと良い」って言う。イタリアに行って美味しいもの食べたら、どんな人でも元気になりそうだ。なんだか、人生相談したくなりませんか。イタリア人に。
『これが私の人生設計』の主人公は、キャリアと才能に恵まれて、海外で活躍していた女性建築家セレーナ。故郷が恋しくなってイタリアで帰国した彼女がぶつかるのは、不況による就職難と、男社会の伝統。アルバイトをしながらなんとか生活をやりくりし、あるとき集合住宅のリノベーション・プロジェクト案に応募、見事に当選する。ただし、それは男性の作品として応募したもので、自分はアシスタントのふりをすることになってしまう。ピンチを切り抜ける奮闘ぶりを描いたコメディで、イタリア人らしい温かさに満ち満ちていて、とても楽しい。業界の伝統に悩まされるあたりは、日本にいる女性陣もこみ上げてくるものがあるだろう。この映画の原題は「Scusate se esisto!」=こんな私ですみません。という感じ。こんな私ですみませーん!と明るく言い放てた方が人生、楽だよね、と思う。ピザを食べながら笑い飛ばしてくださいね。
(文/峰典子)