魂のぶつかり合いを目の当たりにする『武曲 MUKOKU』
映画『武曲 MUKOKU』は、 6月3日(土)より全国公開です!
幼少時代から剣道の達人である父親にスパルタ教育で鍛え上げられ、剣道の大会では数々の賞を獲得していた矢田部研吾(綾野剛)。しかしある事件以降、生きる気力を失い剣を棄てその日暮らしの生活をしていた。
一方、ラップのリリック作りに夢中な高校生の羽田融(村上虹郎)は剣道初心者にも関わらず天性の才能を秘めた原石であった。そのことに気づいた研吾のもう一人の師匠である僧侶(柄本明)は融を育てる。
本来なら出会うこともない二人が出会ったとき、一体何が起こるのであろうか?
研吾の幼い頃からストイックな剣道の修行を行う日々はなんとも痛々しくみえた。それでも言葉も交わさず剣と剣を交えることが、唯一父親と向き合える時間だったのだと思うとまた切なくなる。母親はおとなしい人だったように描かれているが存在は大きかったのだと想像せずにはいられない描写。
剣道とラップはどうにも相似点がみつからないと最初は思ったが、剣道とは「心を鍛えるスポーツ」でありラップは「その心を言葉にするもの」なのだと劇中で気づかされていく。
僧侶が語る「心以前の心」という言葉も奥が深い。
剣道をすることで己自身と向き合い戦っている姿が研吾と融それぞれに描かれている。
全体的に一人の人物がこれでもかというほどのドアップで映し出されることが多く、常に一人に焦点を定めてみられるので物語に入り込みやすかった。
だけど本当に鑑賞後のこの疲労感はなんだろう。
剣道をして肉体的に感じるような痛みではなく、心にずっしりと知らなかった新たな感情を教え込まれた疲労感なんだと思う。
言葉で表現できない感情がスクリーンから伝わってくる作品であった。
(文/杉本結)
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『武曲 MUKOKU』
6月3日(土)より全国公開!
監督:熊切和嘉
原作:藤沢周『武曲』(文春文庫刊)
出演:綾野剛、村上虹郎、前田敦子 ほか
配給:キノフィルムズ
2017/日本映画/125分
公式サイト:http://mukoku.com
©2017「武曲 MUKOKU」製作委員会