もやもやレビュー

離れて、逃げて、決意できることもある『森崎書店の日々』

森崎書店の日々 [DVD]
『森崎書店の日々 [DVD]』
菊池亜希子,内藤剛志,田中麗奈,日向朝子
バンダイビジュアル
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 凹むと映画館に逃げ込みます。ひとまず、自分のことを考えずに済むからです。現実を脇においておくことで冷静になれたり、時には観ている映画の中に解決策が転がっていたりします。本作の主人公、貴子が逃げ込んだのは、神保町の古書店でした。
 
 付き合っていたと思っていた恋人が、実は自分のことを何とも思っておらず、そのうえ別の人と結婚することを言い渡された貴子(菊池亜希子)。手痛い裏切りに落ち込んだ貴子は会社を辞め、叔父であるサトル(内藤剛志)の誘いもあり、神保町で営む古書店に転がりこみます。それまで本にはほとんど縁がなかった貴子。ですが、叔父やお店を訪れる常連のおじさん、近くの喫茶店のマスターたちと交流する中で、自然と本のページを捲っていくように。本の世界と一緒に、神保町という街の中にも身を溶け込ませてくようになります。

 温かい街の中で生活をしていく中で、貴子は自分の中に閉じ込めていた負の記憶と対峙する決意をします。その決意を持てるようになったのは、神保町の街とそこで暮らす人々、そして何よりも「本という場所」に逃げ込むことができたからだと思います。真っ正面から向き合うことも大事ですが、時には脇道に逸れ、遠回りをして気持ちをまとめることも、一つの方法ではないでしょうか(私自身、本作を観たのは、就職活動の中で自分の進路に思い悩んでいた時でした)。観る人の居場所の一つにもなる、ゆったりとした時間が心地いい作品です。
(文/伊藤匠)

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