『おいしい生活』を観て、失うことの怖さからちょっと解放された気がした。
- 『おいしい生活 ―デジタル・レストア・バージョン― [DVD]』
- ウディ・アレン,トレイシー・ウルマン,ヒュー・グラント,ウディ・アレン
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世田谷とかで金持ちの豪邸を見かけると、クッパ城を思い出します。失いたくない、クッパのその強い気持ちが8ー4のセキュリティにも表れていたんだなぁと改めて思うのです。
がんばって手に入れたもの、あるいはそうでもなくても、持ってるものを失う怖さは誰にでもあるもの。そんな喪失への恐怖をちょっと楽にしてくれるのが、ウディ・アレンの『おいしい生活』(2000年)です。
銀行強盗計画のカモフラージュのために始めたクッキー屋がなぜか猛烈に繁盛してしまい、一大チェーンを築いて大金持ちになった夫婦の話。本来の目的とは全然違うところに、思わぬ成功が転がっているのがなんとも面白い。本業じゃないぶん、これで成功したい!というプレッシャーがまったくなかったのが逆によかったのか。自分にもそんな棚ぼたがあるかも?って、ちょっと夢を見られる展開です。
とはいえ棚ぼたがそんなに上手くいくはずもなく、結局ふたりは手に入れたもの何もかも失ってしまいます。持っている時はすごく重要に思えた、家や物や人間関係。でも、利害で繋がっているようなものなんて、むしろなくした方が自由になれる。お金や物は、本当に大事なものを見えにくくする。そのことをちゃんと肝に命じながら、夢見て生きて行こうと思わされる映画です。
(文/鬱川クリスティーン)