『8 Mile』を観て、これから文句があるときは全部ラップに乗せようと思った。
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カラオケの店員が部屋にドリンクを持って来た時だけ歌うのをやめるタイプです。
『8 Mile』は2002年カーティス・ハンソン監督の映画。時は1995年、かつて自動車産業で栄え、今はすっかり荒廃したデトロイトで、イケてない仲間達と極貧生活を送りながらラップでスターミュージシャンになることを夢見る白人の青年ジミー。ラップという黒人文化の中で、暴力、裏切り、貧困と戦いながら彼がスターの道を駆けあがって行く様子を描きます。
この映画は、1999年に『ザ・スリム・シェイディ LP(The Slim Shady LP)』で彗星の如く世界のミュージックシーンに現れ一躍スターダムに上り詰め、2000年代の10年間に世界で最も売れたアーティストになったエミネムの半自伝的映画でもあります(アルバムトータルセールスは世界で1億枚!)。
そして映画の主演ジミー役はなんとエミネム本人! 公開当時はエミネムの人気に乗っかったアイドル映画だろうと揶揄されましたが、丁寧に描かれたストーリーとトレードマークの金髪をダークグレイに染め直してジミーを演じ切ったエミネムの演技力の高さも相まって、映画は大ヒット。主題歌の『Lose your self』は2002年度アカデミー歌曲賞を受賞しました。この曲、当時僕も携帯の着信音にしてました。全くなに言ってるか分かりませんでしたが。というかそもそも牛角(焼肉チェーン)以外からメール来ませんでしたが。
この映画の魅力ははなんといっても圧巻のラップバトル。ラップバトルって、ダボダボのズボンに金のチェーンつけてキャップ逆さにした黒人が適当にノリで相手の悪口いいながら「フゥ~~~!!」とかいってるものだとバカにしてましたが、とんでもない!
いかに制限時間内に、即興でその場の観客の心を掴みながら相手の心を折る言葉を心地よいリズムに乗せられるかというバトル。即興で言葉を紡ぐ瞬発力と語彙力、観客のツボと相手の弱点を探す観察力、そして何よりそれを音楽にするリズム感とセンスが求められる極めて知的な遊びなのです!! ビックリしました! 無理! これ日本のヤンキーには絶対無理! もちろん映画本編でもラップバトルのシーンは登場します。英語なので、正直なに言ってるかイマイチ分からないんですが、翻訳者絶対元ラッパーでしょ、ってぐらい日本語字幕のセンスがかなりいいので、わからないなりにかなり本格的に楽しめます。あとやっぱり主演がエミネム本人ってことで、あいつとんでもなくラップ上手いです!!
ラップかっこいい!!この映画を中学生の時に観てたら間違いなくラッパーへの道を歩きだしていたと思います。ダボダボの学ランにパーカー着て(背が伸びたので丈の足りないピチピチ学ランに白靴下でしたが)、彼女とのケンカでもラップでのディスを繰り広げ(彼女いませんでしたが)、地元のヤンキーに絡まれても華麗に相手をラップのディスでかわし(普通に無抵抗でお金とられましたが)、親への反抗期にはとびきりのディスをラップでお見舞いしたでしょう。(反抗期のない良い子でしたが)
何かに不満があって、自分の中にもやもやするものがある人にはおススメの映画です。
(文/前髪ナガレ)