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映画は、掘れば掘るほど面白くなる!『映画の構造分析 ハリウッド映画で学べる現代思想』

映画の構造分析―ハリウッド映画で学べる現代思想 (文春文庫)
『映画の構造分析―ハリウッド映画で学べる現代思想 (文春文庫)』
内田 樹
文藝春秋
637円(税込)
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 巷で大人気の思想家、内田樹先生による映画のお話。他の映画評論集と一線を画しているのは「映画を通じて難しい現代思想を噛み砕いちゃおうぜ、そんでもっかい映画を楽しもうぜ」という超行動志向の内容である点です。

 フーコー、ラカンなどの高名ながら一般人には理解の遠い人たちの唱えた理論を、『エイリアン』『大脱走』『ゴーストバスターズ』といった傑作かつポピュラーな映画を駆使してバッサバッサと説明し倒していく内田先生。難解だけど世界を理解するのにプラスとなるような考え方を、映画を通して理解出来る。そして映画を「あぁ、見たい」と思える。「一石二鳥」という言葉ここまでが相応しい本も中々ないと思います。

 例えば、フロイトが『精神分析入門』という大著の中で述べた「抑圧」の理論を、『大脱走』を用いて説明する部分。前口上として書いてあるフロイトの原文を読んでもチンプンカンプンなんですが、内田先生の喫茶店の片隅で話しているような語り口にかかると、ものの数ページで理解できてしまうわけです。囚人と看守の関係性や、そもそも映画の舞台となる刑務所がなんのメタファーなのか。このお話を聞いた後に作品を見返すと、「自分はまだ5%くらいしか作品を楽しめていないのかもしれない」と思うほどプラスの未知がザクザク掘り出されてしまいます。

 またこの本は、「映画の限界性」も同時に教授してくれます。私たちが「面白い!」と思って胸をときめかせるお話の構造は、たいてい昔からある必勝パターンの焼き直しである、という中々ショッキングなご教授です。

 ですが、それに失望する事はありません。「だって僕たちが笑ったり涙したりしている物語は、そんな有限の構造を組み合わした無限の物語なんだから」内田先生はそんな温かいお話しをして、僕たちの映画愛を確固たるものにもしてくれます。
 映画を外から見て、また好きになる。「100円レンタルで映画を見過ぎて、ちょっと倦怠感が生まれてるかも」という方にこそお勧めします。

(文/伊藤匠)

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