もやもやレビュー

恋愛映画のふりをした進撃のコメディ映画『箱入り息子の恋』

『箱入り息子の恋』
テアトル新宿・HTC有楽町ほか全国公開中

 あまり恋愛映画を見ません。だって辛いから。映画の主人公の幸せに比べて自分は・・みたいな劣等感を感じてしまうコテコテの恋愛ものは敬遠しがちです。(映画館で観る時は、内容的にカップルばかりなのも遠慮してしまう一因)

 そんな僕が、名前からしてもろ恋愛映画の本作を見に行ったのは、大ファンである星野源さん演じる主人公の天雫健太郎(なんかジブリに出てくるイケメンみたいな名前)が、35歳にして童貞という生粋の純潔男子という設定だったためです。こんな天然記念物のような主人公の恋愛映画なら自分と比べて苦しむ事もないはず、と思い映画館に足を運びました。

 真面目だけが取柄な健太郎は「ご飯代がもったいない」という理由で、わざわざお昼になると家に帰ってくるほどの堅物くんです。13年間欠勤もなし。そんな彼の将来を心配し、両親(平泉成/森山良子)は代理お見合いに臨みます。そこで出くわしたのが夏帆ちゃん演じる今井奈帆子の親御さん(大杉漣/黒木瞳)。

 奈帆子の写真を見て一目で気にいる天雫夫妻に対して、なんの特徴もない経歴と写真の健太郎に難色を示す今井夫妻。ともすると、この場で終わってしまうかに思われた健太郎と奈帆子の(間接的な)出会いは、この後思わぬ偶然をきっかけに進展していくことになります。

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映画『箱入り息子の恋』より
 月9なみにドラマチックな展開を用意してくれている本作ですが、恋愛ものが苦手な人にもお勧めしやすい理由はラブコメのコメの部分がラブを豪快に喰ってしまっているためです。実際に映画館でも、観客の笑い声(たまに失笑)が多発。こんなに笑いの一体感を覚える映画は久しぶりに見ました。主題は恋愛ながらそれが過剰になることを避け、その代わりにコメディ要素をまんべんなくふりかけた映画、そんな印象を僕は受けました。


 もちろん「カップルでイチャイチャしながら見たいなー」という方にもお勧めですが、笑いすぎてイチャイチャしてる暇はそこまでないかも。あと、あまりイチャイチャしすぎると、星野源さん目当てで見に来たサブカル男子&女子(もちろんひとり)に殺意を抱かれる可能性もあるのでご注意を!

(文/伊藤匠)

『箱入り息子の恋』
監督・脚本:市井昌秀
出演:星野源、夏帆 他
配給:キノフィルムズ
©2013「箱入り息子の恋」製作委員会

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