もやもやレビュー

リメイク版『死霊のはらわた』が怖すぎる。

『死霊のはらわた』
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
新宿ピカデリー他全国公開中!

 ゴールデンウィークは実家でひたすらオンラインゲームをしていました。でもそれだけではありません。絶賛公開中のリメイク版『死霊のはらわた』、新宿ピカデリーで観てきました。

 オリジナルの『死霊のはらわた』(1981年/日本公開1985年)は、『スパイダーマン』シリーズの監督サム・ライミ(当時23歳)のデビュー作。製作費35万ドルという低予算にもかかわらず、今以て語り継がれる超レジェンド作品です。で、今回監督するのはウルグアイ出身の34歳新人監督、フェデ・アルバレス。YouTubeにアップした約5分の短編映画『パニック・アタック』がサム・ライミの目にとまり、リメイク版の監督に大抜擢されたのだそうです。フェデさんもすごいが、YouTubeもすげー。というかサム・ライミすげー。ジェダイが若きジェダイを見いだしたかのような感動があります。ちなみにサム・ライミ自身も製作総指揮と脚本でかかわっています。また、オリジナル版で主人公のアッシュを演じたブルース・キャンベルもプロデューサーを務めています。

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中央が今作の主役的存在のデビッド(シャイロー・フェルナンデス)。どことなくダルビッシュに似ています。
 

 リメイク版の舞台はもちろんあの山小屋。オリジナルでは5人の若者が遊びに行くという設定でしたが、今回は主人公兄妹が幼少期を過ごした思い出の場所という設定が設けられ、薬物依存の妹・ミアの治療のために5人の若い男女が集います。メンバーは、兄のデビッドとその彼女のナタリー、看護師のオリビア、高校教師のエリック、そしてミアです。

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死霊に取り憑かれる前のエリック(高校教師)が読んでいるのが、あの「死者の書」。人間の皮で装丁された邪悪すぎる本です。

 とりあえず、何コレ! 超怖いんですけど!と、誰もが思うと思います。半分以上、ギギギーッっと顔が歪んだ状態で観ることになるからです。オリジナルはスプラッター表現がいきすぎて逆に笑いに変わっていくのも醍醐味のひとつでしたが、リメイク版は笑ってる場合ではないほど怖いしエグい! 地下室、古時計、大量の血、死霊視点のカメラワーク、森の木レイプ、チェーンソー、そして「死者の書」。オリジナルの要素を効果的に用いながら、最高に恐ろしく再構築されているんです。『悪魔のいけにえ』のリメイク『テキサス・チェーンソー』もよかったですけど、『死霊のはらわた』はそれをはるかに超えている!! さすがレジェンドは違います。そう、たとえるならiPhone3GS→iPhone4の変化に似ています。Retinaディスプレイになって形がより洗練されたという。このたとえによって、あまりすごく感じなくなっちゃったもしれないけど!

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取り憑かれてしまって大変なことになっている看護師のオリビア。
 

 また『死霊のはらわた』はゾンビ映画ともいわれることがありましたが、このリメイクによって『エクソシスト』系、つまり悪魔憑きの映画であることが明確になったと思います(人間が何らかのチカラによって理性を失い凶暴になるという点では、ゾンビともいえますが)。それはいいとして、怖さが『エクソシスト』系なんです。血の量がオリジナル以上に半端ないスプラッターであると同時に、より禍々しく狂気に満ちて、人間の弱さを突くような心理的な怖さが増幅されています。さらにそこに貞子まで加わって、ホラー・オールスターといった様相。これを5分の短編映画しか撮ったことのない(たぶん)新人監督が作ったという事実にも脱帽です。

 エンドロールのあとには、ファンならニヤニヤしてしまうおまけが用意されていますので、最後まで観ることをお勧めします。ある意味、映画の怖さが台無しになるくらいのおまけですが、なんかホッとします。ちなみに現在、同監督で2を製作中だとか。きっと片腕チェーンソーが登場するんじゃないかなぁ。

(文/根本美保子)

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