『スプリング・ブレイカーズ』を観て、無の境地へ旅立った。
映画『スプリング・ブレイカーズ』シネマライズ他、全国上映中!
ビキニを着たのは生涯で2回です。でも『スプリング・ブレイカーズ』を観ました。
毎日が退屈でたまらない4人の大学生女子が、自分の居場所を求めてフロリダのビーチへスプリング・ブレイク(春休み)しに行くお話。監督は『キッズ』(脚本)、『ガンモ』(脚本・監督)で知られる90年代カッコいいインディ映画の牽引者、ハーモニー・コリンです。
超絶スタイリッシュな映像にのせて、のっけから大スクリーンにおっぱい&お尻が雨、あられのように押し寄せるこの映画。冒頭、真夏のフロリダのビーチシーン。ロリポップを口に咥えてシュポシュポするギャルズ、タモリ倶楽部ばりの揺れるどアップお尻、放尿風ドリンクサーブシーンなどなど、恍惚の限りが尽くされ・・・そう、言っておこう。もうビキニも着たことがないような奴は、序盤2分で置いてけぼりだ! 現に私はそうなった! 必要なのは考えることじゃない。この恍惚の現場にいち早く飲まれることであり、リア充たちが集うパーティに間違えて出かけてしまった時の孤独感のことなどフラッシュバックさせてる場合ではないのです。
キリストへの信仰心を覗かす黒髪の女の子・フェイス(セレーナ・ゴメス)を除いて、ギャルズそれぞれの個性がほぼ描かれていないからではないでしょうか。同じような金髪で、同じようなビキニを着て、同じようにセックスのことばかり考えて、ブリトニー・スピアーズを聴いている彼女たち、誰が誰だか見分けがつきません。それは冒頭に出てくるおっぱいの群衆にも言えることで、カッコいい以外に何の感情もわいてこないのは、みんな同じに見えるから。無感覚のままたくさんの刺激を受け止めているうちに、いつしか無の世界へと突き抜けて行ってしまうのです。札束もセックスもビキニも、すべてどうしようもなく無価値。やがてスプリング・ブレイクを終え日常に戻る彼女たちも、もしかしてそんなことを感じたんだろうか。
ちなみに最終的には、揃いの蛍光イエローのビキニとピンクの覆面を纏った彼女たちが、あり得ない展開を見せてくれます。ジェームズ・フランコ演じる麻薬ディーラー、エイリアンの踏み台にされっぷりも最高で、なんだか結局どうでもよくなる。そんな映画です。
(文/鬱川クリスティーン)
『スプリング・ブレイカーズ』 シネマライズ他、全国上映中!
©Spring Breakers, LLC.
配給:トランスフォーマー