もやもやレビュー

『桐島、部活やめるってよ』は青春に後悔のある人は観に行っちゃだめ!! 原作はぎりぎりセーフ!!

桐島、部活やめるってよ
『桐島、部活やめるってよ』
朝井 リョウ
集英社
1,089円(税込)
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 バレー部のキャプテンで学校でも中心的存在の人気者、「桐島」が突然部活を辞めるという噂が流れます。その噂をきっかけに学校の様々な人間関係が少しずつおかしくなっていきます。
 同タイトルの原作は作者の朝井リョウが早稲田大学在学中の2009年に第22回小説すばる新人賞を受賞したデビュー作です。平成生まれ......。若い。若すぎる。一体私は何をやっているのでしょう。事前情報だけで若き才能への嫉妬に狂っています。
 暇だったので、タイトルにつられて映画を観に行ったんですが、完全にやられました。心ボロボロです。とにかく学園生活の描き方がリアルすぎる! クラスのあいつもあいつもあいつも見たことあります! そして自分がそこにいます! 学園全体が勝ち組と負け組に分かれている感じとか、クラスのイケてる男女の絡み方とそれにおどおどするイケてない奴らとか! 女子特有の仲良しなのに牽制し合う感じとか。  
 もう筆者がそのクラスの中にいました。もちろん女子と話したいのに話せないモジモジ君です! 体育の時間を怖がるナヨナヨ君です! 嘘です! いや、嘘であってほしい! ともかくそれぐらいのリアリティでした。お昼休みの購買部、放課後の体育館、帰宅部たちのバスケ、吹奏楽の音、部活が終わるのを待つ彼女、内緒のカップル、2人乗りでふざける男子、学校ではない私服で会うクラスメイトの新鮮さ。ぐあああああああああ!!!!!!!!! やり残した青春が詰まりすぎて窒息死する!!! 酸素!! 酸素!! もちろん映画の内容も面白いのですが、ストーリーとは関係ない登場人物達のリアルな学園生活にいちいち心をえぐられます!! デフォルメのない本物の学園生活を描いていてウソがありません。ゆえにダメージは大きいです。映画の音が静かなので本当にいつ息を吸っていいのかわからなくなって、終始呼吸困難気味でした。息もできない、それだけ良くできた映画ってことです!!  恐らく華やかな学園生活を当たり前のように満喫した諸君はこれを観ても「あーわかるー!」とか「懐かしいなーこの感じ!」とかシレっと言っちゃうんだろ!? え!? そうだろ!! ちくしょう!!! 映画への満足感、称賛と共に、途方もない焦燥感を感じたので、もっと自分をいじめようと思って原作も読みました。その日に。
 原作ももちろん学園生活がリアルに描かれているんですが、キャラクター達の心理面がきちんと書かれていて、感情移入しやすく映像がない分心に負うダメージは少なかったです。あと、個人的に映画では描かれなかったある女の子のエピソードがとても好きで、涙がでたりでなかったりしました。
 とりあえず青春に後悔がある人は映画を観に行っちゃだめです。「あいつ、会社やめるってよ」になっちゃいます。原作はぎりぎりセーフです。「会社休むってよ」ぐらいです。

(文/前髪ナガレ)

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