連載
怪獣酋長・天野ミチヒロの「幻の映画を観た!怪獣怪人大集合」

第80回 『悪魔のゾンビ天国』

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『悪魔のゾンビ天国』
1987年・アメリカ・93分(劇場未公開)
監督/ペリクルス・レウニス
脚本/フェスター・スメルマン
出演/リサ・デヘイヴン、ウィリアム・W・ベンソンほか
原題『REDNECK ZOMBIES』

***

 原題『REDNECK ZOMBIES』の「レッドネック」とは、北米南部やアパラチア山脈南部の農村部に住む保守的な貧困白人層を指す蔑称だ。南部の強い日差しの下で野外労働する白人は首筋が赤く日焼けしていることから、南北戦争時に「北部のヤンキー」、「南部のレッドネック」と互いに罵り合ったのが始まり。人種差別語とは違い、現在は『翔んで埼玉』のようにジョークでイジラレるレベル。その特徴は次のような感じだ。

●低学歴・低所得の肉体労働者か零細農業を営み、家には南軍旗が掲げられ、マイカーはピックアップトラック。
●人種差別的で共和党員(トランプ支持者多数)、創造説を信じ日曜日には教会の礼拝を欠かさないキリスト教右派。
●歯並びが悪く南部訛りを話す。服装は垢抜けないTシャツかチェック柄のネルシャツ(袖を切り落としてノースリーブにも)、薄汚れたオーバーオール。野球帽かカウボーイハットを被る。女性はムームー、カーラーを巻いたままの髪。
●カントリー・ミュージックや白人系ブルース・ロックを好み、家では野球やフットボールなどテレビばかり観ている。

これらを踏まえ、その不謹慎な粗筋を読んでいただきたい。


 米国北東部メリーランド州の精神病院。拘禁服を着た目の虚ろな女が、人間の死体からハミ出た内臓を食べているゾンビを回想している。ここでカントリーソングが流れタイトルイン。女の記憶をたどる物語が始まる。

 アパラチア山脈の麓を、荷台に黄色いドラム缶を乗せたジープが走っている。「なんで俺がこんな南部の田舎まで......」と愚痴るメリーランド州の黒人兵士。彼は化学戦の演習で使用した核廃棄物を、南部で不法投棄する密命を帯びていた。ラジオからローカル局のキリスト教番組が流れる。「神は人間を平等にお造りになった。黒人を殺してユダヤ人を追い払おう」に「ファック!」と中指を立てる黒人兵士。

 ガタガタ道になり、荷台からドラム缶が落下。坂の下に転落したドラム缶を回収しようとする兵士に、「ここは俺の土地だ」とメタボの巨漢が銃を突きつける。野球帽を被り、袖を切ってノースリーブにしたチェック柄のネルシャツにオーバーオール。完璧なレッドネックさんだ。兵士はメタボに威嚇射撃され、任務を放棄して遁走する。メタボはドラム缶に記してある「危険・放射性廃棄物」を「クリスマスまでに開けないこと」と読み上げる。レッドネックの識字率は低い。そこへ同じ村に住む酒造業の一家が現れ、「その蒸留器をどうするつもりだ」とバカが増える。歯が抜けた親父とテレビばかり観ている3人のバカ息子だ。

 彼らはメタボからドラム缶を横取りし、それを火で熱して蓋の穴からチューブを通し垂れる水滴を瓶に集める。駄菓子屋の着色メロンジュースみたいな緑色の液体が次々と瓶詰され、親父は息子の1人に出荷を命じる。車はもちろんピックアップトラックだ。息子は酒屋や飲食店に核廃棄酒を卸したのち、友人らにも売りつけて回る。その中の1人の若いママさんは、核廃棄酒を哺乳瓶に容れ自分の赤ちゃんに飲ませる(児童虐待)。

 一方、森の中を歩く男女7人のキャンパー。ここで冒頭の拘禁されていたリサ(太め)が登場。道に迷った頼りないガイドに、リサは尻を向けて屁をこく(ウソでしょ、ヒロインなのに)。そこへ潔癖症のアンディが消臭スプレーを撒く(笑)。やっと目的地に着きテントを張った一行はマリファナでラリって大騒ぎ。森を隔てた少し先では、核廃棄酒で酒盛りしていた酒造一家がゾンビになっていた。

 翌朝、森の中で野グソしようとしたサリーがゾンビに襲われ、その悲鳴を聞き森へ行ったテレサも食われてしまう。ゾンビに首筋を噛まれたアンディは、苦し紛れに消臭スプレーをそいつの顔に掛けてから死亡。だがゾンビは緑色の泡になって溶けてしまう。

 4人が生き残り、テレサの彼氏だった獣医大の学生ボブがゾンビを解剖する。ゾンビの腹の中から靴やら人の手やらが出てきて、小さな人形みたいな物(胎児かな)を見つけたボブは、「これはオレのだ」とポケットに仕舞う(なるほど)。ボブはすでにLSDをやり幻覚症状が出ていて、空洞になった腹の中に顔を突っ込み「遊園地みたい。ジェットコースターがある。大観覧車も! 楽しいな」と言って、その中にゲロを吐く。

 やがて基地で上司に叱られた兵士が、2人の同僚を連れてドラム缶の奪還に戻ってくる。だが、村人が核廃棄酒を飲んでゾンビになったレッドネック・ゾンビーズ(メタボも赤ちゃんもいる)に3人とも食われてしまう。一方4人のキャンパーは消臭スプレーで応戦(効いている)するが、やがてスプレー缶も空になり男3人がゾンビに食われる。

 1人だけ生き残ったリサは、ゾンビ酒を造った一家と凄惨な血闘を展開。リサの目は完全にイッチャッテいて、一家を首チョンパや脳ミソ破壊などで全滅させる。と、そのリサをメタボが襲いレイプ! 恍惚の表情を浮かべるメタボの目に木片を深々と刺して仕留めたリサは、ついに力尽きて意識が遠のく。リサが気付くと冒頭の拘禁室にいた......。


 その他、歯茎や歯が溶ける噛み煙草を売る「タバコマン」や、傷つけた相手のチェキを撮る「クレイジー・ヒッチハイカー」などイミフなキャラも出てくる。この作品は監督も脚本家も出演者たちも他にキャリアが見当たらないビデオ撮りのインディーズ映画。どこかで作品を観たZ級映画の大手・トロマ社(代表作『悪魔の毒々モンスター』)の関係者が「これはウチにピッタリだ」と拾い上げ、奇跡的にソフト化されたのであった。

(文/天野ミチヒロ)

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天野ミチヒロ

1960年東京出身。UMA(未確認生物)研究家。キングギドラやガラモンなどをこよなく愛す昭和怪獣マニア。趣味は、怪獣フィギュアと絶滅映像作品の収集。総合格闘技道場「ファイトネス」所属。著書に『放送禁止映像大全』(文春文庫)、『未確認生物学!』(メディアファクトリー)、『本当にいる世界の未知生物(UMA)案内』(笠倉出版)など。
世界の不思議やびっくりニュースを配信するWEBサイト『TOCANA(トカナ)』で封印映画コラムを連載中!

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