一家全員、死刑判決―― 実際の事件の犯人が記した衝撃の獄中手記

全員死刑: 大牟田4人殺害事件「死刑囚」獄中手記 (小学館文庫)
『全員死刑: 大牟田4人殺害事件「死刑囚」獄中手記 (小学館文庫)』
鈴木 智彦
小学館
540円(税込)
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 2017年11月に公開された映画『全員死刑』。これはある殺人事件の犯人として逮捕された父親、母親、長男、次男の一家四人全員に死刑判決がくだったという映画のストーリーに由来しているものです。この内容だけでもなかなか刺激的ですが、驚くべきはこれは実際にあった事件をベースにしているということ。2004年に福岡県大牟田市で起きた4人連続殺人事件をもとにしているのがこの映画であり、その原作が今回ご紹介する『全員死刑: 大牟田4人殺害事件「死刑囚」獄中手記』なのです。

 著者は暴力団取材に定評のあるライター、鈴木智彦さん。ですが、本書の多くは、一家の次男である北村孝紘による手記がそのまま掲載されています。次男は犯行の一部始終を記した手記を獄中から送りますが、これを受け取ることとなったのが鈴木さん。彼はあまりに凶悪な手記の内容と、面会時の次男の実直な好青年ぶりとのギャップに戸惑いを覚え、事件の真相に迫ることに......。

 本書での鈴木さんの役割は、同じ人間とは思えぬほど残虐な殺人者たちと私たち一般人との媒介者でもあります。北村家次男の手記は、4人の命を奪うこととなった経緯や殺害場面がこと細かに詳しく書かれてはいますが、共感できるかと言われれば首をかしげるところばかり。「なぜ兄、父、母に言われるがままに殺人に走ったのか?」「なぜ4人も殺す必要があったのか?」などは手記を読んでも、一般的な感覚を持つ者であればとうてい理解ができないにちがいありません。ここで周囲への聞き込みや自身の考察などから、読者がわかるように合間合間に注釈をしていくのが鈴木さんというわけです。

 たとえば次男による殺人への衝動と興奮。次男は殺人前に覚せい剤を使用していますが、鈴木さんは「覚せい剤は判断を狂わせるばかりか、睡眠障害が重なることで、人間を極めて狂暴にする。残忍に友人を殺しておきながら、申し訳ないと後悔するのも、善悪の判断基準が狂うシャブの特徴で、この薬を使っている以上どれだけ異常な事件でも、『ケミカルマッド』である以上、まともに分析しても意味がない」と書いています。

 また、なぜ家族に言われるがままにためらいもなく4人を殺せたのかについて、鈴木さんは「彼に欠けているのは、家族が生きるためなら、他人の生命さえ奪ってもかまわないという社会性のなさであり、我々と変わらぬ人間らしい感情はふんだんに持っているのだ」と分析しています。

 鈴木さんのこうした説明を読んで、ごく一般的な感覚を持つ私たちはようやくほんの少しだけ、殺人者の思考に近づくことができるのではないでしょうか。

 それにしても、人間は生育環境が大事であることを感じずにはいられません。四人全員死刑判決を受けた彼らがどのような一家であるか、興味を持った人は読んでみてはいかがでしょうか。ただし、読後感が良いものでないことはあらかじめお伝えしておきます。

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