相次ぐ薬物問題は氷山の一角!? 薬と性の切っても切り離せない関係とは?
- 『薬物とセックス (新潮新書)』
- 溝口 敦
- 新潮社
- 778円(税込)
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2016年、世間を大きく騒がせた、著名人らの薬物問題。2月に元プロ野球選手の清原和博氏が覚醒剤で、6月に元俳優の高知東生氏も覚醒剤で、10月には元女優・高樹沙耶氏が大麻で逮捕されました。
11月にはCHAGE and ASKAのASKA氏が覚醒剤で再逮捕されるも、嫌疑不十分のため不起訴。また、12月には写真週刊誌『FRIDAY』で、成宮寛貴氏のコカイン使用疑惑が報道された結果、芸能界引退となった騒動をご記憶の方も多いでしょう。
今年2月に発売されたASKA氏の告白本『700番 第二巻/第三巻』(扶桑社刊)も、発売早々話題となっていますが、芸能人やスポーツ選手といった有名人の間に薬物が蔓延している背景には、どんな事情があるのでしょうか?
ベストセラーになった『暴力団』(新潮社刊)の著者であるジャーナリスト・溝口敦氏は、最新刊『薬物とセックス』で、厚労省麻薬取締部関係者P氏に取材し、以下の言葉を紹介しています。
「私たちが取締りの現場で感じていることは、彼らの中には、彼らの年齢とか職業に相応する社会性を有してない者が多いんじゃないか。いわゆる人間教育がなされてないということです。例えば幼少期からの英才教育などで音楽やスポーツ、その他の分野で特異的な能力を発揮していると思うんですけど、一般的な人間としての教育が不十分なような気がします」(本書より)
P氏は、薬物使用の背景には、人間性に未熟さがあることや倫理観の欠如を指摘し、逮捕された有名人は氷山の一角であり、実際にはもっと多いだろうと述べています。
また本書で見逃せないのが、薬物とは切っても切り離せない関係にあるセックスについての言及。
愛人関係にあった女性と共に逮捕されたASKA氏(※2014年の最初の逮捕時)の他にも、交際相手や夫婦、男女のカップルで逮捕されるケースが多いことを挙げ、なぜ男女で使用する事例が多いのか? について触れています。
溝口氏は本書で、「乱用の元凶は男だと断定してもいい」と述べ、覚醒剤そのものに催淫性はないものの、男性より女性の方が、薬物感受性が高く、影響をモロに受けやすいこと、覚醒剤を使ったセックス"キメセク"で、女性を"シャブ漬け"にして、クスリ代ほしさに売春させるように仕立て上げる"ヒモ"など、「女性を依存症にする男たち」(本書より)の手法を明らかにしています。
覚醒剤依存症に陥った人々の破滅的な末路についても紹介する本書は、知られざる薬物の恐ろしさをリアルにあぶり出す1冊と言えるでしょう。